事件処理の方針策定の重要性

弁護士になりたての頃、多くの弁護士から様々なことを教えていただきました。

 

そのうちの1つに、受任時に事件処理の方針を策定することの重要性があります。

 

一口に「事件処理の方針」といっても、検討するべき事項は事案によって様々です。

 

適切な事件処理の方針の策定のためには、その事件のポイントになることを把握しなければなりません。

 

また、一旦事件処理の方針を策定しても、状況が変更した場合には、その都度、事件処理の方針を再度検討しなければなりません。

 

私は、弁護士になりたての頃から、事件処理の方針の策定を行ってきたつもりですが、今思えば、検討が不十分だったケースもありました。

 

現在、依頼者様のご意向に沿った解決のためには、あらかじめ適切な事件処理の方針の策定ができているかどうかで決まるのではないかとさえ考えるほど、事件処理の方針の策定には時間を掛けています。

 

どんな事件でも、受任時と示談交渉の前など、最低でも2回は時間を掛けて事件処理の方針を再検討しています。

 

また、事件処理の方針の再検討が必要となる場合には、その再検討の時期を逃さないことが重要です。

 

事件を多く抱えて忙しい時などには、事件処理の方針の再検討が必要になっている状況を見過ごしてしまう危険性もありますので、注意が必要です。

 

そのため、私は、1週間に1回はすべての案件の進捗状況を確認し、事件処理の方針の再検討の必要性がないか確認しています。

 

複数の後遺障害がある場合

 

今日は、複数の後遺障害がある場合の運用についてご説明します。

 

後遺障害の「併合」とは,複数の後遺障害が認められた場合の等級の取り扱いになります。

 

自賠法施行令第2条第1項第3号には,自賠法施行令別表第二に定める後遺障害が2つ以上ある場合の取り扱いについて,以下のとおり規定しています。

 

⑴ 別表第二第5級以上の等級に該当する後遺障害が二つ以上ある場合には,重い方の等級を3級繰り上げる。

 

⑵ 別表第二第8級以上の等級に該当する後遺障害が2つ以上ある場合には,重い方の等級を2級繰り上げる。

 

⑶ 別表第二第13級以上の等級に該当する後遺障害が2つ以上ある場合には,重い方の等級を1級繰り上げる

 

⑷ ⑴~⑶以外の場合には,一番重い後遺障害の該当する等級を,2つ以上ある後遺障害の等級とする。

 

併合基準に照らすと,後遺障害の等級が第4級と第5級が認められた場合には,第4級を3級繰り上げて,併合により第1級となります。

 

後遺障害の等級が第7級と第8級が認められた場合には,第7級を2級繰り上げて,併合により第5級となります。

 

後遺障害の等級が第10級と第12級が認められた場合には,第10級を1級繰り上げて,第9級となります。

 

後遺障害の等級が第8級と第13級が認められた場合には,第8級を1級繰り上げて,第7級となります。

 

以上と異なり,第11級と第14級が認められた場合には,第11級のままであり,等級の繰り上げはありません。

 

すなわち,第14級の認定は,他の等級に影響しないので注意が必要です。

 

後遺障害の等級が認定された場合,認定された後遺障害等級に基づいて後遺障害に関する損害を算出することになります。

 

この認定された等級の内容は,後遺障害の逸失利益や慰謝料などに大きく影響していきます。

 

同じ等級でも,認定された後遺障害の内容によって,賠償額が増減される可能性も少なくありません。

 

私は、名古屋を含む愛知県・岐阜県・三重県などの交通事故を扱うことが多いのですが、複数の後遺障害がある被害者の方も少なくありませんので、常にこのようなルールを意識して対応しています。

交通事故で必要となる診断書あれこれ

私が住む名古屋市も寒さが増してきました。

 

寒さが出てくると、風邪に気を付ける必要があります。

 

風邪といえば、お医者様です。

 

交通事故の被害では、お医者に診断書を依頼するなど、お医者様にお願いすることも数多くあります。

 

そこで、今回は、思いつくまま、医師に依頼することが多い診断書をあげていきます。

 

1 交通事故で怪我をした場合には医師の協力が不可欠

 

交通事故で怪我をしたために治療費や慰謝料等の損害が発生した場合,事故の相手方に対して損害賠償請求をすることになります。

 

損害賠償請求をする場合,怪我をした事実や怪我によって損害が発生した事実を示す証拠が必要になります。

 

怪我の症状や治療内容については医学的な事項になりますので,証拠となる書面については,医師に協力してもらうことになります。

 

2 警察に人身事故届けを出すための診断書

 

交通事故で怪我をした場合,警察に対して事故によって怪我をしたことを届けることになります。これをいわゆる人身事故の届出といいます。

 

人身事故の届出をする場合には,病院の医師が作成した診断書を提出する必要がありますので,治療を受けられた病院の医師に診断書を作成してもらう必要があります。

 

3 後遺障害診断書

 

治療を受けても怪我の症状がよくならない状態に至った場合あるいは治療の効果が一時的で症状が一進一退になっている場合には,後遺障害の申請手続きをすることになります。

 

後遺障害の認定は,主に,自動車事故の場合には自賠責保険の審査機関や裁判官が行いますので,病院の主治医ではありません。

 

もっとも,その認定にあたっては,病院の主治医が作成した後遺障害診断書などの医療記録が重要な判断材料になってきます。

 

そのため,後遺障害の手続きをする場合には。主治医に対して後遺障害診断書の作成依頼をすることになります。

 

4 症状に関する意見書

 

相手方との交渉や裁判などの法的手続きにおいて,症状固定時期や後遺障害の内容や程度が争点になってくる場合も珍しくありません。

 

その場合には,怪我の内容や症状,治療状況について,主治医や専門の医師から医学的な意見を述べてもらう意見書を作成していただき,証拠書類として提出することがあります。

 

このように、診断書といっても様々であり、必要となる診断書の種類も豊富です。

 

今回ご説明したもの以外にも診断書の種類はあります。

 

 

自賠責保険の調査

加害者が被害者の人身損害を賠償するための自動車損害保険は,自賠責保険(強制保険)と任意保険の2段階の立て付けになっています。

 

交通事故の被害にあったときに,加害者が自動車損害保険に加入しているかどうかが不明なときがあります。

 

加害者の任意保険会社の加入については,加害者に直接確認する方法が現実的です。

 

他方で,加害者が自賠責保険に加入しているかどうかについては,加害者に直接確認する方法以外にも確認する方法があります。

 

具体的には,交通事故証明書を取り寄せて,自賠責保険の加入歴を確認する方法です。

 

交通事故証明書は,自動車安全運転センターの都道府県方面事務所長が、警察から提供された証明資料に基づき、交通事故の事実を確認したことを証明するために作成する書面です。

 

交通事故証明書には,事故車両の自賠責保険の加入の有無が記載されています。

 

そのため,交通事故証明書の記載を手掛かりに,自賠責保険の加入の有無を確認することが可能です。

 

近年,自動車運転者の中には,任意保険のみならず自賠責保険未加入のまま,車を運転している方も増えてきているようです。

 

そのため,今後,被害者が,加害者の自賠責保険の加入の有無を確認する必要に迫られることも増えてくるかもしれません。

 

加害者が任意保険未加入あるいは自賠責保険すら未加入の場合に,被害者の損害をどのように補てんするかというのは,弁護士に相談するべき事項といえます。特に重傷を負っている場合には,どこから,どのように補償をうけるかというのは重要です。

 

愛知県は交通事故発生件数が多いですので,特に,ホットな話題だと思います。

 

 

代理人としての立場の違いと訴訟活動

私は,交通事故や労災事故をよく扱っています。

 

示談交渉の事件だけではなく,訴訟事件の対応も行っています。

 

例えば,愛知県内だけをみても,名古屋,岡崎,半田など様々な地域の裁判所に係属する事件の対応をしています。

 

損害賠償請求をする側の代理人(被害者側の代理人)を務めている事件もありますし,他方で,他人から損害賠償請求をされた側の代理人(加害者側の代理人)を務めている事件もあります。

 

同種の事故や後遺障害について,被害者側の代理人として対応したこともあれば,加害者側の代理人として対応したこともあります。

 

当然のことではありますが,被害者側であるかあるいは加害者側であるかによって,行うべき訴訟対応の内容は全く異なります。

 

被害者側の代理人として,訴訟対応をする場合,損害賠償請求の主張内容やその根拠となる証拠を積み重ね,裁判官に認めてもらうことが目標となります。

 

他方で,加害者側の代理人の場合,被害者側からの損害賠償請求の主張内容や証拠に対して反論を加え,裁判官に被害者側の損害賠償請求を認めさせないあるいは減額させることが目標となります。

 

私のように,交通事故や労災事故について,両方の立場から様々な事故を扱う弁護士は,決して多数派ではないと思います。

 

両方の立場で対応をする場合,時には,同時期に,同種の重い後遺障害の事故を,両方の立場から対応することもあり,心理的な負担も否めません。

 

しかし,両方の立場を経験すると,被害者側の立場で代理人をする場合でも,相手方の戦略や意図を把握して対応できるので,相手方の対応を予想して,訴訟活動を行うことができます。

 

もちろん,片方の立場のみしか経験していない弁護士でも,相手方の対応を予想して,秀でた訴訟活動を行っている弁護士も少なくありません。

 

しかし,両方の立場で実際に対応しているかどうかは,経験の差として,間違いなく,訴訟活動の充実に影響してくるものではないかと思います。

 

弁護士を選ぶ場合,そういった観点から,弁護士を選ぶのも1つかもしれません。

裁判記録の調査

弁護士の業務において,裁判例の調査検討は,切っても切れない関係にあります。

 

事件についての問題点を調査し,対応方法を検討する方法の1つとして,関連する裁判例の分析は有用です。

 

裁判例の調査というと,判例雑誌や判例検索サイトを用いて,判決書を分析し,検討するという方法が一般的です。

 

他方で,裁判例の調査をする場合に,判決書だけではなく,当事者の主張内容や提出証拠をも検討する必要があるときもあります。

 

裁判所の判決書は,当事者の主張内容や証拠の内容によって顕在化された争点について判断したものになります。

 

そのため,当事者間の主張内容や証拠の内容を検討して初めて裁判例を理解できることもあるからです。

 

民事訴訟法第91条第1項には,何人も,裁判所書記官に対し,訴訟記録の閲覧を請求することができると規定されています。

 

そのため,どなたでも,原則として,訴訟記録の閲覧が可能です。

 

もっとも,訴訟記録の閲覧をするためには,訴訟記録が置かれている裁判所まで行かなければなりません。

 

そのため,遠方の裁判所で審理された訴訟記録など,閲覧のために,相当な負担がかかる場合もあります。

 

また,民事訴訟法第91条には,閲覧が認められない例外事由も規定されており,必ず閲覧ができるというわけでもありません。

 

私についていえば,これまで,名古屋地方裁判所で審理された事件記録を閲覧したことがあります。

 

同じ事務所以外の弁護士の主張書面等を閲覧する機会はないので,色々な点で,参考になります。

 

 

書面による準備手続

コロナウイルスの影響で,オンライン会議などが主流となる企業が増えていると聞きます。

 

法曹業界も,コロナウイルスの影響は避けられず,電話会議やオンラインを利用した裁判期日・打ち合わせが増えているように感じます。

 

しかし,民事訴訟などの裁判手続について,電話やオンラインを利用した期日を導入する場合,一定の制約が生じます。

 

すなわち,民事訴訟などの裁判手続は,民事訴訟法などの法律の規定に従って運用されるため,法律で定めた手続に反する運用は行えないという制約です。

 

弁護士会・裁判所では,コロナウイルスの影響が生じる前から,ウェブ会議など,オンラインを利用した手続の導入を目指した議論がされていましたが,その実現には民事訴訟法の改正が必要になる可能性もあり,現行の民事訴訟法の規定で行えない運用もあります。

 

そのため,コロナウイルスの影響が出た場合において,オンラインや電話を利用した期日の運用が必要になるときには,現行の民事訴訟法の規定の範囲内で行わなければならないという制約が生じます。

 

この課題を解決する方法として,利用されている一例が,書面による準備手続(民事訴訟法175条以下)です。

 

書面による準備手続とは,当事者の出頭なしに準備書面の提出等により争点及び証拠の整理をする手続をいい,裁判所・当事者双方全員が電話によって期日に参加することを可能とする手続です。

 

民事訴訟法では,書面による準備手続は,当事者が裁判所の遠隔の地にいる等,相当な場合に行えるという要件があり,無制約に行える手続きではありません。

 

そこで,裁判所は,コロナウイルスによる感染を防ぐという事情をもって,上記相当性の要件を満たすと判断し,書面による準備手続を運用しているようです。

 

ただし,書面による準備手続は,準備手続の陳述や証拠調べを行えない等の限界があります。

 

そのため,民事訴訟における審理をすべて電話会議のみで行うことはできず,電話を利用した期日としてはまだまだ問題点があるように感じますが,現行の民事訴訟法の規定のもと工夫された運用方法であると思います。

 

名古屋地方裁判所などでも,電話会議が増えている実感があります。

今後,ますます,民事訴訟の運用に変化が生じると思うと,議論に目が離せません。

無保険車傷害保険

私が住む愛知県は,交通事故の発生件数が少なくありません。

交通事故に遭われた方の中には,加害者が無保険であるというケースもあるようです。

今回は,加害者が無保険車である場合に機能する無保険車傷害保険についてご説明します。

 

1 無保険車傷害保険とは

 

無保険車傷害保険とは,人身事故の被害者が,加害者が対人賠償責任保険(共済)をつけていない,責任保険金額が不十分であった,あるいは,当て逃げ等のために加害者不明の場合などの場合に備えた損害保険であり,被害者の保険です。

 

2 無保険車傷害保険の必要性

 

交通事故の被害者は,原則として,事故の責任のある加害者へ請求することになります。

加害者に賠償責任保険(自賠責保険や任意の対人賠償責任保険)がある場合には,賠償責任保険会社から補償を受けることになります。

他方で,加害者が賠償責任保険に加入していない場合には,加害者本人に請求をしなければなりません。

また,自賠責保険にのみ加入している場合,,自賠責保険の支払金額を超えた損害がある場合には,加害者本人に請求することになります。

加害者本人に十分な資力がない場合には,被害者は十分な補償を受けられません。

そこで,このような場合に,無保険車傷害保険など被害者の保険を使う必要がでてきます。

 

3 無保険車傷害保険の内容

 

無保険車傷害保険は,被保険者の死亡または後遺障害による損害を補償する保険です。

そのため,被害者が単なる傷害しか負っていない場合には,この保険は機能しません。

支払われる保険金額(損害額)は,保険会社の対人賠償責任保険の支払基準に基づいて被害者と保険会社が協議を行って支払額が決定されます。

協議が成立しない場合には訴訟もあり得ますので,無保険車傷害保険の協議をする前に弁護士に相談するとよいかもしれません。

 

なお,当法人は,四日市法律事務所を開設しました。

裁判例の読み方

法律実務を扱う上で,過去の裁判例の理解及び検討は必要不可欠です。

 

日本法において,過去の裁判例は法源とはなりませんので,先例拘束性の原理はもちません。

 

しかしながら,民事訴訟において,最高裁判所の判例・大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をした判決は,上告理由となりえます(民事訴訟法318条1項)。

 

また,法律実務において,上記裁判例に当たらなくても,参考として参照するべき価値のある裁判例であれば,法律の適用判断の重要な判断指標となります。

 

そのため,過去の裁判例の適用範囲を理解・検討することは重要です。

 

判例の適用範囲を考えるにあたり,判例分類を考える必要があります。

 

ある制定法の条件又は効果に係る規定の解釈(法的意義)に関して判断を示したもの,制定法の要件効果を前提に当該事例に対する適用について判断を示したものもあります。

 

そのため,裁判例といっても適用範囲は様々であり,一概に判断することはできません。

 

裁判例の適用範囲について検討するときには,最高裁判所民事判例集などの判例解説やコンメンタール等の条文解説書などを踏まえて,検討することになります。

 

過去の裁判例の分析検討は,学生のときに力を入れて勉強していたのですが,実務に入ってからも研鑽しなければなりません。

 

愛知県弁護士会には図書館などもありますので,期日の合間に勉強することも欠かせません。

下請企業の作業員による元請企業への賠償請求

名古屋も暖かくなってきましたが,まだまだコロナウイルスの影響がなくなりませんね。

 

今回は,労災事故についてご説明いたします。

 

建設現場,工事現場あるいは工場内作業では,下請企業の作業員や派遣会社から派遣されてきた作業員が作業するケースも少なくありません。

 

元請企業の作業現場で作業に従事していた下請企業の作業員が,怪我を負うケースも散見されるところです。

 

下請企業の作業員が,元請企業の作業現場で作業をしている場合において,怪我を負ったときには,元請企業に対して,怪我を負ったことについて損害賠償請求ができるのでしょうか。

 

1 賠償請求の法的根拠

 

従業員が作業中に怪我をした場合において,勤務先企業に賠償請求をするときには,安全配慮義務違反を根拠に賠償請求することが考えられます。

 

賠償請求の法的根拠は,その他にも,使用者責任や工作物責任などもあります。このブログを参照してください。

 

安全配慮義務とは,使用者が,労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をする義務をいい,判例によって認めれた後,労働契約法5条によって使用者の義務として明文化されています。

 

下請企業の作業員が,元請企業に対して,損害賠償請求をするときにも,元請企業に対して安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求をすることが多いです。

 

2 元請企業に対して安全配慮義務違反を問えるか

 

元請企業に対する損害賠償請求が認められるためには,安全配慮義務違反を基礎づける法令・通達等の違反の事実が必要です。

 

しかしながら,上記義務違反のみで直ちに損害賠償請求が認められるわけではありません。

 

元請企業と下請企業の作業員との間には,労働契約を締結していないため,契約上の規律はなく,元請企業は下請企業の作業員に対して安全配慮義務を負わないのではないかと考えられる余地があるからです。

 

すなわち,下請企業の作業員を直接的に指揮・命令するのは,下請企業になります。

 

そのため,下請企業の作業員に対して安全配慮義務を負う使用者は,元請企業ではなく,下請企業のみではないかという問題点があります。

 

3 最高裁判所の判例

 

最判平成3年4月11日労判590号14頁では,元請企業の造船所においてハンマー打ちの作業に従事していた下請企業の労働者が,職場の騒音によって聴力障害に罹ったとして,元請企業に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をした事案において,以下のポイントを指摘して,元請企業に対して安全配慮義務違反を認めました。

 

すなわち,①下請労働者が元請企業の管理する設備・器具等を使用し,②元請企業の指揮監督を受けて稼働し,③作業内容も元請企業の労働者とほぼ同じであったこと等のポイントです。

 

上記判例は事例判例でありますが,直接の契約関係にない元請企業が下請企業の作業員に対して安全配慮義務を負うことを前提とした事案で意義のある裁判例です。

 

下請企業の作業員の立場としては,上記ポイントを参照しつつ,安全配慮義務違反を問えるかを検討していくことになりますが,上記ポイントを満たさない場合でも,元請企業に対して損害賠償請求をできる場合も少なくありません。

 

労災によって怪我をした場合,その後遺障害によって一生が左右される可能性もあります。

 

そのため,適切な賠償請求をすることが必要不可欠です。

 

労災事故については,経験やノウハウが要求されるので,労災に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

 

感染防止

コロナウイルスが流行っています。

 

幸いにも,現時点までにおいて,私の周りでコロナウイルスに罹った人はいないのですが,予断はできません。

 

コロナウイルスの感染拡大防止のために,事務所内でも,裁判所内でも,弁護士会内でも,厳重な対策がとられています。

 

裁判所では,期日で使われるラウンドテーブルの椅子に座るときは,隣の人と1席以上間隔をあけて座るように指示している裁判所もあります。

 

また,噂では,マスクをつけないと裁判所に入れないという運用をしている裁判所もあるようです。

 

現時点では,コロナウイルスの影響で,予定されていた裁判期日が延期されるというケースは聞いたことがないのですが,この先はそのようなことも考えられるのでしょうか。。。

 

民事事件や刑事事件など,延期できない手続きや期日は少なくありませんので,裁判所の厳重な予防措置も必要なのかもしれません。

 

私が所属する愛知県弁護士会でも,弁護士向けに予定されていた直近の研修はほとんど中止・延期になってしまいました。

 

弁護士会の研修は,他の弁護士や裁判官からのノウハウや経験を聞けることが多く,楽しみにしていた研修もありましたので,残念ですが,やむを得ないと思います。

 

研修がない分,自分で,文献調査や判例調査をする時間に充てています。

 

時間をかけて必要な調査や情報の習得ができる点はありがたいのですが,やはり,他の弁護士の経験を聞くという点には限界があるので,文献調査・判例調査だけではなく,弁護士会の研修参加も重要だと感じます。

作業中の事故など労働災害の損害賠償請求の法的根拠

私は,愛知・岐阜・三重などの東海地方において,工事現場や工場などでの作業中にケガを負った労働者の方から,企業への損害賠償請求について,ご依頼・ご相談を受けることがあります。

 

今回は,作業中にケガを負った労働者が,加害者あるいは勤務先企業等に対する損害賠償請求をする場合の法的根拠について,ご説明いたします。

 

1 法律構成

 

① 不法行為責任・使用者責任

 

他の労働者等第三者に,被災原因について,故意過失がある場合,その第三者は,被害者に対して,不法行為責任を負います。

 

また,被災原因について故意過失のある第三者が,業務中の場合,第三者の指揮監督をする使用者(被害者の上司あるいは会社など)は使用者責任を負います。

 

② 工作物責任

 

労働者が,作業中にケガを負った場合に,ケガの発生が,施設など工作物の装備や設備が不十分であることに起因する場合,当該工作物の占有者や所有者に対して,損害賠償請求をすることができる場合があります。

 

③ 自賠責法第3条に基づく責任

 

車両にひかれたためにケガを負ったなど,車両の運行に起因して事故が発生した場合,車両の運転者に対して,損賠賠償請求をできる場合があります。

 

④ 債務不履行責任

 

当事者間での契約上の義務等や安全配慮義務等の違反がある場合に,企業や所属会社に対して,債務不履行責任として,損害賠償請求ができる可能性があります。

 

2 安全配慮義務について

 

安全配慮義務とは,ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において,当該法律関係の付随的義務として,当事者の一方又は双方が相手方に対して負担する義務をいいます。

 

安全配慮義務は,陸上自衛隊八戸車両整備工場事件判決(最判昭和50年2月25日民集29巻2号143頁)において,最高裁判所が認めた法律上の義務です。

 

現在は,労働契約法第5条により法律上の根拠として認められています。

 

作業中の事故など労災事故については,証拠資料の収集や賠償請求の組み立てなど専門的な知識と経験が問われる事件です。

 

また,労働事件に詳しい弁護士といっても,残業代請求や労務管理に詳しい弁護士であり,労災事故の経験が十分とは言えない弁護士もいるものと思われます。

 

作業中にケガを負われた被害者の方は,労災事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

あけましておめでとうございます

新年明けましておめでとうございます。

 

本年もよろしくお願いいたします。

 

弁護士業務について,私の昨年を振り返ると,交通事故に関しての裁判対応が多い年でした。

 

損害賠償請求をする側の代理人(被害者側の代理人)を務めた事件もありますし,他人から損害賠償請求をされた側の代理人(加害者側の代理人)を務めた事件をもあります。

 

愛知・岐阜・三重などの東海地区だけではなく,関東地域での裁判も対応しました。

 

人身損害の裁判では,医療記録等の資料が約4000頁以上ある裁判も複数対応しましたし,1日かけて被害者の方が通院されていた病院の医師を訪問して治療状況をお伺いしたりすることも多数ありました。

 

また,人身損害の裁判だけではなく,物的損害の裁判も対応することもありました。

 

物的損害の裁判では,裁判例や文献を調査検討しながら,1つの証拠をどう用いるか1カ月以上試行錯誤を繰り返した裁判もありました。

 

深夜や早朝に事故現場に行って,現場の調査をしたことも少なくありません。

 

多くの事件に対応する中で,実感しているのは,関係者の方から直接お話をお伺いしたり,事故現場などの現場に足を運ぶことの重要性です。

 

私は,周りの弁護士と比べても,依頼者の方や病院や勤務先会社など関係者の方と直接お会いしたり,事故現場などの現場に足を運ぶことが多いように感じていますが,これらによって得られるものは多いです。

 

例えば,昨今,グーグルマップやグーグルビューなど,ネット上で交通事故の現場を確認できるツールも発達していますが,事故現場に行って初めてわかることも数多くあります。

 

また,関係者の方から直接話を聞くことで,初めてお伺いできるお話もあります。

 

もちろん,このような対応がかえって逆効果になることも稀にありますので,全ての事案でそうしているわけではありませんが。。。

 

 

本年も,交通事故や労災事故について,示談交渉での解決が見込まれる事案だけではなく,調停・裁判になることが予想される事案が複数あります。

 

私が,弁護士になりたての頃,依頼者の方から,丁寧な対応を褒めていただき,「いつまでも初心を忘れず,そのままでいてください」とのお言葉をいただいたことがあります。

 

依頼者の方からかけていただいたこの言葉が,今の私の仕事に対する姿勢の背骨になっています。

 

本年も,この言葉を大切に,仕事をしていきたいと思っています。

 

至らない点もあるかと思いますが,本年もどうぞよろしくお願いいたします。

人身傷害保険②

以前のブログでも説明した人身傷害保険について,もう少し詳細に説明したいと思います。

 

 

1 被害者が人身傷害保険をどのように使うか

 

 

人身傷害保険は,被害者が被る損害に対して支払われる傷害保険金として,被害者が被る実損をその過失の有無,割合にかかわらず塡補する保険金といえます。

 

 

人身傷害保険は被害者が加入している保険です。

 

 

被害者に一定の過失割合があり,かつ,人身傷害保険への加入がある場合,被害者は,加害者への賠償請求及び自身の人身傷害保険への保険金請求の両方ができることになります。

 

被害者が人身傷害保険に関与する場合,①加害者に賠償請求をした後,人身傷害保険へ保険金請求をする方法(賠償先行),②人身傷害保険金を受け取った後,加害者に賠償請求をする方法(人傷先行)があります。

 

①の賠償先行の場合,人身傷害保険から支払われる保険金額は,人身傷害保険約款に定める「お支払いする保険金」等の規定により決定されることになります。

 

②の人傷先行の場合,加害者への賠償請求において,人身傷害保険金のうちどの範囲を既払額として処理すべきかが問題になります。

 

この問題は,人身傷害保険会社の代位の範囲と裏表の関係にあるため,裁判例では,保険約款に定める「代位」の規定の解釈論として判断がされ,代位の範囲の結果として,既払金の範囲が決まることになります。

 

被害者が人身傷害保険を請求する場合のリーディングケースとして,最判平成24年2月20日民集66巻2号742頁があります。

 

 

2 最判平成24年2月20日民集66巻2号742頁について

 

人身傷害保険の保険金を支払った保険会社の代位の範囲について,最判平成24年2月20日民集66巻2号742頁は,訴訟基準差額説(訴訟で認定された被害者の過失割合に対応する損害額を既払の人身傷害保険金額が上回る場合に限り,その上回る額についてのみ,被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得するという考え方)を採用しています。

 

これは,あくまで②の人身先行の事案ですので,①の賠償先行の事案にはあてはまりません。

 

この考え方を確認したのが,①の賠償先行について判旨した大阪高判平成24年6月7日判タ1389号259頁です。

 

3 現在の人身傷害保険の約款規定について

 

最判平成24年2月20日民集66巻2号742頁の判断が出た以降,多くの保険会社が人身傷害保険の保険約款を改定し,訴訟基準差額説を前提にした規定に改めています。

 

ただし,人身傷害保険の保険金請求については,保険約款に基づいて請求します。

 

そのため,最判平成24年2月20日判決が採用した訴訟基準差額説が,保険約款上訴訟基準差額説を採用していない場合にも適用されるかどうかについては,裁判例でも判断が分かれるところですから,今後も裁判例を注視する必要があります。

 

特に,東京地裁や名古屋地裁,大阪地裁など交通事故を集中的に扱う専門部がある裁判所の裁判例は,実務への影響も大きいため,目が離せません。

裁判期日の雑感

どのような分野の事案でも,裁判に至るケースというのがあります。

 

このような裁判対応については,弁護士の主要業務といってよいと思います。

 

裁判対応とは,具体的にいうと,相手方と話し合いでの解決ができないときに,やむを得ず,訴訟提起をする,あるいは相手方から訴訟提起をされる場合の,裁判の対応です。

 

民事裁判の期日でどのようなことが行われるかについては,事案の内容にもよりますが,大まかにいえば,期日までに当事者から提出された主張書面や証拠書類の確認と,双方の主張内容の確認,争点の確認,今後の審理の方針のすり合わせなどが行われます。

 

とはいえ,期日においてどの程度の討議ややり取りがされるかについては,事案の内容や裁判官の個性によって,様々です。

 

私が多く扱う交通事故や労災事故についていえば,もちろん事案の内容の違いが大きいとは思いますが,少なからず裁判官の個性による違いもあるのではないかと思います。

 

例えば,裁判官が積極的に当事者双方に主張内容を確認し今後主張や立証してほしいポイントを指示していく,いわば裁判官主導型の裁判官もいます。

 

私が出会ったある裁判官は,1回の期日で,30分以上の時間をかけて,今後の審理の方針や争点の確認の打ち合わせをされた方もいらっしゃいました。

 

他方で,裁判官が積極的に介入するのではなく,主張内容や立証方法について当事者の意向を最大限尊重するという非主導型の裁判官もいらっしゃる気がします。

 

もちろんこれは,当事者双方の主張内容から,争点や今後の審理の方針が明確になっているため,あえて積極的に介入する必要がないからという理由もあります。

 

そのような場合には,淡々と,審理の方針を確認して,10分未満で期日が終わる裁判期日もあります。

 

どのような裁判であっても,私としては,裁判の期日の前日には,記録を読み直して,期日での審理に備えていくことに変わりはありませんが,たくさん裁判をしていくと,様々な裁判官に出会うことができますので,いろんな裁判官がいるなぁと思います。

 

私は名古屋や岐阜の裁判所に行くことが多いですが,地域や地方によって,違いがあるのかなぁと思うことがあります。

人身傷害保険

被害者が交通事故に遭った場合,加害者や加害者加入の保険会社への損害賠償請求をすることが可能です。

 

もっとも,被害者にも落ち度があり,過失がある場合には,加害者へ請求できるのは,損害のうち加害者の過失割合相当分のみになります。

 

そのため,被害者側の過失割合が一定程度ある場合には,加害者への賠償請求によっても十分な賠償を受けられない可能性もあります。

 

このような場合に備えて,被害者側の保険に人身傷害保険の付帯があると,便利です。

 

人身傷害保険は,契約者である被害者に過失があるときでも,その過失割合を考慮することなく,一定額の保険金を支払う保険です。

 

言い換えれば,人身傷害保険は,被害者が被る損害に対して支払われる傷害保険金として,被害者が被る実損をその過失の有無,割合にかかわらず塡補する保険金といえます。

 

 

被害者に一定の過失割合があり,かつ,人身傷害保険への加入がある場合,被害者は,加害者への賠償請求及び自身の人身傷害保険への保険金請求の両方ができることになります。

 

そのため,少なくとも,裁判をした場合には,損害のうち,加害者過失割合相当分について加害者から賠償金を支払ってもらい,加害者へ請求できない自己過失割合相当部分について,人身傷害保険より支払ってもらう可能性がでてきます。

 

これは,人身傷害保険の保険金を支払った保険会社の代位の範囲について判旨した最判平成24年2月20日民集66巻2号742頁を踏まえて,保険約款の規定がそのような規定になっている保険会社が多いためです。

 

稀に,インターネットの記事では,人身傷害保険があれば,必ず被害者の過失割合相当部分の支払いが受けられるという記事をみることもありますが,これは適切な見解ではないと考えています。

 

上記最判平成24年2月20日判決は,あくまで,保険約款に定める代位の規定に「保険金請求権者(注:被害者のこと)が他人に損害賠償の請求をすることができる場合には,訴外保険会社は,その損害に対して支払った保険金の額の限度内で,かつ,保険金請求権者の権利を害さない範囲内で,保険金請求権者がその他人に対して有する権利を取得する」という規定がある場合の,約款の解釈についての判断です。

 

そのため,加害者への賠償請求と人身傷害保険の保険金との関係については,あくまで,被害者が加入する人身傷害保険についての保険約款を確認する必要があります。

 

大きなけがを負ったにもかかわらず,被害者側の過失割合が大きいことを理由に,加害者側の任意保険会社から保険金の支払いを拒否されることがありますが,人身傷害保険がある場合には,対応方法が柔軟になります。

 

私が住む愛知県では交通事故が多いですから,人身傷害保険への加入は検討されてみても良いのではないかと思います。

インターネットの知識と弁護士

インターネットなどで情報収集が容易な昨今,周りの人から,弁護士に相談する意味や依頼する意味はあるのかと聞かれることがあります。

 

確かに,知識を提供するという点では,弁護士に相談しなくともインターネットなどで調査できるという面はあると思います。

 

しかし,それでもなお,私個人としては,弁護士に相談するメリットがあるのではないかと考えています(もちろん私が弁護士だからということもありますが,決して営業トークではないです)。

 

例えば,私が多く扱う交通事故や労災事故についても,文献や判例雑誌はたくさんあります。また,インターネットにもたくさん知識があふれています。

 

けれども,知識を知っているだけでは実務では役に立ちません。

 

知識や情報をどのように理解し,個々の事案においてどのように使うかを判断する必要に迫られます。

 

知識や情報はあくまで一般論のものですから,インターネットや雑誌だけでは,目の前にあるケースにおいてその知識や情報がどのような意味をもつのかという答えはかえってきません。

 

そのため,各人で, 知識や情報をどのように理解し,個々の事案においてどのように使うかを判断する必要があります。

 

弁護士に依頼する意味の重要な1つは,まさに,この判断をすることにあると感じています。

 

さらにいえば,1つの事案でも,弁護士が事案の解決のための見通しやポイントなどを説明する場合に,弁護士によって説明の仕方や重点に違いが生じてくることも少なくないように思います。

 

例えば,法律問題に悩む人に,事件の見とおしを説明する場合,専門的な知識や法律をそのまま伝えても意味がありません。その方の事情に即して,法律問題のポイントを具体的に説明する必要があります。

 

 

しかし,1つの事案について,弁護士によって特に大事だと思っているポイントが違うこともあります(ただし,当法人の弁護士は当法人内外で研修をたくさん受け,情報を共有しているため,ポイントや考え方に大きな違いはないように思います。)

 

その場合には,弁護士の考え方の違いから,説明の重点の置き方に違いが生じてきます。

 

これは,一般的な知識を前提に,個々の弁護士が,その事案について,どのような見とおしをもっているか,どのような見立てをしているかの違いといってもいいと思います。

 

一般的な知識は同じでも,弁護士によって,見立ての仕方が変わってくることは珍しくありません。

特に違う法律事務所の弁護士との相談の比較において顕著に感じます。

 

そう考えると,個々の事案を解決するためには,インターネットでの知識だけでは不十分であり,弁護士に相談する意味・依頼する意味があると思います。

 

私自身,愛知県,岐阜県,三重県,福井県などの地域で,これまで数多くの依頼者の方にご依頼をいただいておりましたが,依頼者の方に上手く説明できたこともあれば,依頼者の方にモヤモヤさせてしまったこともあります。

 

依頼者の方に上手く説明できなかったときには,その日一日,悩むことも少なくありません。

 

 

基本の重要性

 

交通事故,労災事故など,依頼者の方に満足していただける解決をするためには,適切な事案対応が必要不可欠です。

 

適切な事案対応のためには,最新の知識や判例に至るまで,深く広く理解する必要があります。

 

しかし,弁護士としてそれ以上に重要な素養として,民法や民事訴訟法など基本的な法律に対する深い理解が必要であると思っています。

 

私自身の自戒にもなりますが,個々の事案の対応にあたっては,民法や民事訴訟法の基本原理に基づいて,議論を整理し,論点を分析し,事案の対応を検討する能力(もちろん経験も)が必要不可欠だからです。

 

例えば,交通事故や労災事故を扱う文献や判例雑誌は数多くありますが,それでも判例の集積や学説の議論が十分とはいえない論点も少なくありません。

 

また,複雑な事件のために,そもそもどのような問題点や論点があるのかの整理から必要となるケースもあります。

 

そのような事案にぶつかったときに,民法や民事訴訟法の基本原理に立ち返って検討することで,解決の突破口を見つけることがあります。

 

さらにいえば,一見複雑な事案でも,実は民法や民事訴訟法の基本的な理解が求められているだけであり,解決は容易であるという事案も少なくありません。

 

 

そのため,私自身の自戒を込めて,弁護士の重要な素養として,民法や民事訴訟法など基本的な法律に対する深い理解が必要不可欠であると思っています。

 

民法や民事訴訟法,刑法などの基本法は,司法試験で勉強する基本科目ですので,弁護士などの法曹人は,学生自体から勉強しています。

 

それでも,専門的な分野を扱う実務において,民法や民事訴訟法の基本原理を踏まえて対応することは,決して容易なことではありません。

 

少なくとも,私自身についていえば,特に弁護士になりたての頃には,民法や民事訴訟法の基本原理に立ち返った対応ができていなかったのではないかと思うこともあります。

 

私は,このような反省を踏まえて,弁護士として仕事をするようになって以降,学生時代以上に学ぶ機会を大事にするようになりました。

 

その結果,今では,事務所内の研修,所属する愛知県弁護士会での研修を積極的に受講し,座学だけではなく,座学では学べない実務知識を習得することを心掛けるようになり,また,休日には図書館などで調べ物や調査などの勉強をするようになりました。

事故と歯牙障害

1 交通事故・労災事故で歯に障害が残ってしまった

 

交通事故や労災事故で歯が複数本欠けてしまったり,折れてしまったがために,今後の生活に大きな影響が起きることがあります。

 

 

私は,名古屋や東海地方などで交通事故や労災事故の相談に数多く対応しておりますが,自転車での事故や業務中の転倒事故などで歯牙障害の障害が残る方も少なくありません。

 

歯は日常生活において不可欠なものですから,適切な賠償金をとる必要がありますが,具体的にどのような賠償金がありえるのでしょうか。

 

今回は歯牙障害について説明いたします。

 

2 後遺障害とは,

 

後遺障害とは,これ以上治療を続けても症状の改善が望めない状態(症状固定)になったときに存在する障害をいいます。

 

症状固定になったときに残った症状が全て後遺障害となるわけではありません。

 

交通事故による後遺障害の認定は,自動車賠償保障法施行令の別表第1及び第2に定めた,後遺障害別等級表に基づいて判断されます。

 

労災事故についても,同様の等級表に基づいて判断されます。

 

そのため,後遺障害が認定されるかどうかは,症状が,別表に定められた等級表に該当するかどうかが重要になります。

 

3 歯に関する後遺障害(歯牙傷害)

 

歯に関する後遺障害については,以下のものがあります。

10級4号 14歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの
11級4号 10歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの
12級3号 7歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの
13級5号 5歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの
14級2号  3歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの

 

歯科補綴など,難しい表現があるものの,わかりやく説明すると,交通事故や労災事故で現実に喪失したり,著しく歯が欠けた歯の本数が対象になっていきます。

 

4 後遺障害が認定された場合の慰謝料

 

後遺障害が認定された場合,後遺障害慰謝料というものが別途請求できますが,歯に関する後遺障害慰謝料について,裁判基準の目安としては,以下のとおりになります。

10級4号 550万円
11級4号 420万円
12級3号 290万円
13級5号 180万円
14級2号 110万円

 

上記は,あくまで目安額であり,個別的な事情も考慮されることがありますが,歯に関する後遺障害では,上記表のとおり,高額な後遺障害慰謝料が認められる傾向にあります。

 

5 後遺障害逸失利益については注意が必要

 

後遺障害逸失利益は,後遺障害により労働に支障が生じた場合に,その労働能力喪失分を損害として請求するものです。

 

逸失利益は,事故前年の基礎収入×労働能力喪失率という計算方法により計算されます。

 

交通事故の赤本などで掲載されている,後遺障害別等級表・労働能力喪失率⑴という表があり,逸失利益の計算では,後遺障害の等級に従った労働能力喪失率を参考に計算することが多いです。

 

しかしながら,労働能力喪失率は,職業,年齢,後遺障害の部位,程度,事故前後の稼働状況を踏まえて,総合的に判断されます。

 

歯に関する後遺障害の場合には,現実の労働に支障がないと判断され,労働能力喪失率は認定されなかったり,著しく低い喪失率と判断される可能性もあるので,注意が必要です。

 

労災や交通事故で歯に関する後遺障害が残りそうな場合には,一度,弁護士に相談してください。

交通事故・労災事故と成年後見人

私は,愛知・岐阜・三重など東海北陸地域で,交通事故や労災事故の相談に数多く対応しています。

 

事故により重篤な症状が発生した場合,成年後見制度の利用を検討する必要があることがあります。

 

今回は,成年後見制度についてご説明いたします。

 

1 成年後見制度とは

 

成年後見制度とは、認知症や精神障害,交通事故の怪我の影響などによって判断能力が不十分な方々を保護するために、家庭裁判所に申請して,その方々を保護または支援してくれる人(成年後見人)を付ける制度のことをいいます。

 

2 成年後見制度の種類

 

成年後見制度には,法定後見制度と任意後見制度の2つの制度があります。

法定後見制度は判断能力が実際に衰えてから行うことができ、任意後見制度は判断能力が衰える前から行うことができます。

 

3 なぜ交通事故で成年後見人が必要なのか

⑴ 法律行為の有効性が認められない場合がある

 

認知症や精神障害,交通事故や労災事故の影響などによって判断能力が不十分な方は,法律上,示談をしたり財産管理をご自身で有効にすることができなくなります。

 

そのため,成年後見人が,判断能力が不十分な方の意思を尊重しつつ,示談をしたり,財産管理をするということが必要になってきます。

 

⑵ 悪徳な相手方に付け込まれないようにするため

 

加害者の側が,判断能力が不十分な方に付け込み,不当に低い賠償金で示談をさせるということも,考えられます。

 

そこで,成年後見人が関与することで,そのようなケースを阻止するということが必要になります。

 

4 成年後見人をつけないで示談をしたためにトラブルになるケースが増えています

 

近年,判断能力が不十分な方に成年後見人をつけないまま,加害者の側と示談をしたために,後から,示談の有効性が争点になり,裁判になるというケースが増えています。

 

そのような裁判の場合,裁判が長期化され,当事者の方の更なる負担が増すことが予想されます。

 

そのため,交通事故や労災事故の当事者が,認知症や精神障害,怪我の影響などによって判断能力が不十分な方々の場合には,成年後見人をつけるべきかどうか,医師や弁護士に相談してください。

 

なお,当法人のホームページの集合写真が新しくなったようです。

弁護士法人心のホームページはこちらです。