事故と歯牙障害

1 交通事故・労災事故で歯に障害が残ってしまった

 

交通事故や労災事故で歯が複数本欠けてしまったり,折れてしまったがために,今後の生活に大きな影響が起きることがあります。

 

 

私は,名古屋や東海地方などで交通事故や労災事故の相談に数多く対応しておりますが,自転車での事故や業務中の転倒事故などで歯牙障害の障害が残る方も少なくありません。

 

歯は日常生活において不可欠なものですから,適切な賠償金をとる必要がありますが,具体的にどのような賠償金がありえるのでしょうか。

 

今回は歯牙障害について説明いたします。

 

2 後遺障害とは,

 

後遺障害とは,これ以上治療を続けても症状の改善が望めない状態(症状固定)になったときに存在する障害をいいます。

 

症状固定になったときに残った症状が全て後遺障害となるわけではありません。

 

交通事故による後遺障害の認定は,自動車賠償保障法施行令の別表第1及び第2に定めた,後遺障害別等級表に基づいて判断されます。

 

労災事故についても,同様の等級表に基づいて判断されます。

 

そのため,後遺障害が認定されるかどうかは,症状が,別表に定められた等級表に該当するかどうかが重要になります。

 

3 歯に関する後遺障害(歯牙傷害)

 

歯に関する後遺障害については,以下のものがあります。

10級4号 14歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの
11級4号 10歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの
12級3号 7歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの
13級5号 5歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの
14級2号  3歯以上に対し,歯科補綴を加えたもの

 

歯科補綴など,難しい表現があるものの,わかりやく説明すると,交通事故や労災事故で現実に喪失したり,著しく歯が欠けた歯の本数が対象になっていきます。

 

4 後遺障害が認定された場合の慰謝料

 

後遺障害が認定された場合,後遺障害慰謝料というものが別途請求できますが,歯に関する後遺障害慰謝料について,裁判基準の目安としては,以下のとおりになります。

10級4号 550万円
11級4号 420万円
12級3号 290万円
13級5号 180万円
14級2号 110万円

 

上記は,あくまで目安額であり,個別的な事情も考慮されることがありますが,歯に関する後遺障害では,上記表のとおり,高額な後遺障害慰謝料が認められる傾向にあります。

 

5 後遺障害逸失利益については注意が必要

 

後遺障害逸失利益は,後遺障害により労働に支障が生じた場合に,その労働能力喪失分を損害として請求するものです。

 

逸失利益は,事故前年の基礎収入×労働能力喪失率という計算方法により計算されます。

 

交通事故の赤本などで掲載されている,後遺障害別等級表・労働能力喪失率⑴という表があり,逸失利益の計算では,後遺障害の等級に従った労働能力喪失率を参考に計算することが多いです。

 

しかしながら,労働能力喪失率は,職業,年齢,後遺障害の部位,程度,事故前後の稼働状況を踏まえて,総合的に判断されます。

 

歯に関する後遺障害の場合には,現実の労働に支障がないと判断され,労働能力喪失率は認定されなかったり,著しく低い喪失率と判断される可能性もあるので,注意が必要です。

 

労災や交通事故で歯に関する後遺障害が残りそうな場合には,一度,弁護士に相談してください。

交通事故・労災事故と成年後見人

私は,愛知・岐阜・三重など東海北陸地域で,交通事故や労災事故の相談に数多く対応しています。

 

事故により重篤な症状が発生した場合,成年後見制度の利用を検討する必要があることがあります。

 

今回は,成年後見制度についてご説明いたします。

 

1 成年後見制度とは

 

成年後見制度とは、認知症や精神障害,交通事故の怪我の影響などによって判断能力が不十分な方々を保護するために、家庭裁判所に申請して,その方々を保護または支援してくれる人(成年後見人)を付ける制度のことをいいます。

 

2 成年後見制度の種類

 

成年後見制度には,法定後見制度と任意後見制度の2つの制度があります。

法定後見制度は判断能力が実際に衰えてから行うことができ、任意後見制度は判断能力が衰える前から行うことができます。

 

3 なぜ交通事故で成年後見人が必要なのか

⑴ 法律行為の有効性が認められない場合がある

 

認知症や精神障害,交通事故や労災事故の影響などによって判断能力が不十分な方は,法律上,示談をしたり財産管理をご自身で有効にすることができなくなります。

 

そのため,成年後見人が,判断能力が不十分な方の意思を尊重しつつ,示談をしたり,財産管理をするということが必要になってきます。

 

⑵ 悪徳な相手方に付け込まれないようにするため

 

加害者の側が,判断能力が不十分な方に付け込み,不当に低い賠償金で示談をさせるということも,考えられます。

 

そこで,成年後見人が関与することで,そのようなケースを阻止するということが必要になります。

 

4 成年後見人をつけないで示談をしたためにトラブルになるケースが増えています

 

近年,判断能力が不十分な方に成年後見人をつけないまま,加害者の側と示談をしたために,後から,示談の有効性が争点になり,裁判になるというケースが増えています。

 

そのような裁判の場合,裁判が長期化され,当事者の方の更なる負担が増すことが予想されます。

 

そのため,交通事故や労災事故の当事者が,認知症や精神障害,怪我の影響などによって判断能力が不十分な方々の場合には,成年後見人をつけるべきかどうか,医師や弁護士に相談してください。

 

なお,当法人のホームページの集合写真が新しくなったようです。

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後遺障害と労働能力喪失率について

1 はじめに

 

当法人では,交通事故で受傷した,あるいは,職場の工場で作業中に鉄柱が落ちてきた等により被災したという相談を受けることが少なくありません。

 

私自身も,これらのケースの相談に数多く乗り,対応しております。

 

このような事故や被災にあった場合,事故によるけがについて,医療機関等で治療を受けることになります。

 

しかしながら,一定期間治療を受けても,症状が残存することがあります。

 

この残存した症状について,自賠責保険や労災保険での後遺障害の等級認定が認められると,加害者あるいは使用者に対して,後遺障害の賠償請求

ができるのをご存知でしょうか。

 

後遺障害の賠償には,逸失利益と後遺障害慰謝料の2項目があります。

 

今回は,後遺障害逸失利益について,ご説明いたします。

 

2 後遺障害逸失利益について

 

後遺障害が,家事労働や仕事に支障を及ぼし,将来にわたって,労働による収入に影響を及ぼすものと考えられる場合,事故前の年収や仕事への支障の程度をもとに,後遺障害逸失利益を請求できます。

 

後遺障害逸失利益の計算方法は,一般的に,事故前の年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応する中間利息控除で計算されます。

 

それでは,労働能力喪失率は,どのように計算されるのでしょうか。

 

3 労働能力喪失率の考え方

 

労働能力喪失の低下の程度については,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位,程度,事故前後の稼働状況等を総合的に判断して,具体的に判断されます。

 

そして,労働能力喪失率の判断にあたっては,労働省労働基準局長通牒の別表労働能力喪失表が一つの目安になることが多いです。

 

しかしながら,後遺障害逸失利益は仕事への支障による収入力の低下を補填するものですので,仕事の内容上,後遺障害があっても収入力の低下は認められないと反論される場合もあります。

 

他方で,仕事の内容と後遺障害の内容から,等級に応じた労働省労働基準局長通牒の別表労働能力喪失表の喪失率以上の喪失率が認められる可能性もあります。

 

そのため,後遺障害逸失利益は,労働能力喪失率,またそれ以外の労働能力喪失期間や基礎収入の計算方法など,裁判でも争われる問題が多くあります。

 

当法人では,交通事故で受傷した場合,あるいは,職場の工場で作業中に鉄柱が落ちてきて被災したというケースなどのご相談に対応しています。

 

名古屋で,落石や落下事故,プレス機にはさまれたなどの労災事故やや交通事故にあわれた方は,なにかございましたら,いつでもご相談ください。

 

主婦の休業損害について

今日は主婦の休業損害について,ご説明いたします。

 

主婦の休業損害は,とても質問の多い事項ですが,奥が深くすべてを詳細にご説明することはできません。

 

そこで,今回は,簡単にご説明いたします。

 

1 主婦であっても,休業損害を請求できます

 

休業損害とは,傷病の治癒あるいは症状固定までの期間において,就労できないことにより生じる減収についての損害です。

 

休業損害といえば,仕事(会社,アルバイト先など)をしている場合に限られそうですが,そうではありません。

 

主婦のように家族のために家事労働に従事する者の家事労働の制限についても,休業損害の対象となります。

 

家事をしている人が,事故のけがで家事ができない場合,事故の前と同じように家事をするためには,他の家族が自分の生活を犠牲にして代わりに家事を行う,または,家事代行業者に依頼をしなければなりません,

 

すなわち,家族のために家事をしている人は,家族関係であることから金銭による対価支払がされていないにすぎません。

 

家族のために家事をすることは,それ自体,金銭評価の対象になります。

 

したがって,受傷のために家事に従事することができなかった期間について,主婦は休業損害を請求することができるのです。

 

2 主婦の休業損害に関する計算方法

 

休業損害は,1日あたりの基礎収入額に認定休業日数を積算して求めます。

 

家事労働を担う主婦の場合,現金収入がないため,算定の基礎収入額は,女性労働者の平均賃金(賃金センサス第1巻第1表の産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均賃金額または全年齢別平均賃金)を用います。

 

休業日数については,争いがあるところであり,一概には言えませんが,怪我の内容や通院期間,通院日数を踏まえて決定されます。

 

3 主婦の休業損害に関する注意点

 

家事に従事しつつ,パートタイマーとして働く方,事業収入を得ている方は,実収入部分を加算することなく平均賃金額を基礎収入額として用います。

 

一方,収入が平均賃金額以上のときは,実収入額によって給与所得者あるいは個人事業者として損害額を算定することになります。

 

また,子ども夫婦と同居する親などの「従たる家事従事者」は,現実に分担している家事労働の内容や従事できる労務の程度を考慮して,適宜減額された金額を基礎収入額とします。

 

さらに,男性の家事従事者も「主夫」として休業損害を請求できますが,基礎収入額は女性労働者の平均賃金を用いて算出されることが多いです。

 

詳しくは,当法人の弁護士までお問い合わせください。

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優先道路と非優先道路が交差する信号機のない交差点での出会い頭事故の過失割合

 

弁護士の山田です。

 

今回は,交通事故での過失割合が争われるケースについてご説明いたします。

 

1 想定されるケース

 

優先道路を走行していたAの車が,信号機のない交差点を直進通過した。

すると,非優先道路である横断道路を走るBの車が,一時停止の標識を無視して,交差点に進入してきたため,Aの車とBの車が出会い頭で衝突した。

 

Bは,B自身の落ち度が大きいが,Aにも何らかの落ち度があり,Aにも過失があると主張する。

 

Aに過失はあるのだろうか。

 

2 過失とは

 

「過失」とは,事故という結果が発生する可能性があることをあらかじめ予想でき(事故の予見可能性があったのに),適切な回避行動を取れば事故を回避できたのに(結果の回避可能性があったのに),そのような回避行動を取らなかったために事故が発生した場合の落ち度(注意義務違反)をいいます。

 

逆に言えば,過失がない場合とは,事故という結果が発生する可能性があることをあらかじめ予想して,考えられるすべての回避行動をとっていたのに,交通事故が発生した場合です。

 

端的に言えば,事故を回避することができず,もはや不可抗力の事故と同じ場合の事故です。

 

例えば,信号待ちで車を停止していたところ,後ろから追突された場合,追突を回避する行動はとれないので,追突された側に過失はありません。

 

逆に,一見避けられない事故に見えても,事故という結果が発生する可能性があることをあらかじめ予想して考えられるすべての回避行動をとっていたといえなければ,過失があることになります。

 

例えば,交差点に進入する前に,一時停止を無視して交差点に進入してくる車がいることを予想して,車を最徐行して左右の確認をする,クラクションを鳴らして事故の危険を知らせるなど考えられるすべての方法を取りつくしたといえなければ,事故について過失があると判断される場合があります。

 

3 優先道路と非優先道路が交差する信号機のない交差点での出会い頭事故

 

想定されたケースのように,優先道路と非優先道路が交差する信号機のない交差点での出会い頭事故において,優先道路を走行していた運転者に過失があるのでしょうか。

 

過失割合については,事故ごとにケースバイケースであるため,一義的に決定されるわけではありません。

 

しかしながら,あくまで参考程度にすぎませんが,東京地裁民事交通訴訟研究会が発行する別冊判例タイムズ38の図195によると,基本過失割合として,優先道路を走行していた運転者にも10%の過失があるとしています。

 

これは,優先道路を走行する運転者についても,非優先道路を走行してくる車を発見して車を最徐行するなど結果回避行動をとりえたのではないか,すなわち,優先道路を走行する運転者にも前方不注意義務違反や若干の速度義務違反があるのではないかという想定をしているためです。

 

4 過失割合はあくまでケースバイケース

 

もっとも,上記判例タイムズの見解は,あくまで優先道路を走行する運転者にも前方不注意義務違反や若干の速度義務違反があるのではないかという想定を前提にしているため,絶対的なものではありません。

 

実際に,上記判例タイムズの見解と異なり,優先道路を走行する運転者の過失を認めなかった裁判例もあります。

 

すなわち,名古屋高裁平成22年3月31日判決は,上記想定ケースのような事案において,以下のように判断しています。

 

「交通整理の行われていない交差点において,交差道路が優先道路であるときは,当該交差道路を通行する車両の進行妨害をしてはならないのであるから(道路交通法36条2項),優先道路を走行する運転者は,非優先道路を走行する運転車両が優先道路を走行する運転車両の進行妨害をする方法で交差点に進入してこないことを前提として進行してよく,前方注視義務違反の有無もこのことを前提として判断するのが相当である。

そうすると,優先道路を進行している運転者は,急制動の措置を講ずることなく停止できる場所において,非優先道路から交差点に進入している車両を発見した等の特段の事情のない限り,非優先道路を進行している車両が一時停止をせずに優先道路と交差する交差点に進入してくることを予測して前方注視をし,交差点を進行すべき義務はないというべきである。」

 

この裁判例は,あくまで実際に争われた事案に限っての判断であって,優先道路を走行する運転者の過失を一律否定した事案ではありません。

 

しかしながら,過失割合はあくまで個別具体的な事案を前提に判断され,一義的に決まるものではない一例として参考になる裁判例かと思います。

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第三者の過失により賠償額が減額される場合③

名古屋の山田です。

 

前回同様,第三者の過失により賠償額が減額される場合について,説明します。

 

今回は,「身分上・生活関係上一体をなす者」の過失については,被害者本人に過失があるのと同様に,過失相殺の対象とされることについて説明いたしました。

 

それでは,「身分上・生活関係上一体をなす者」とは,具体的にどのような場合を指すのでしょうか。

 

1 「身分上・生活関係上一体をなす者」とは

 

裁判例や学説の多数では,「身分上・生活関係上一体をなす者」について,被害者本人と生計を同一にしている者をいうとされています。

 

わかりやすくいうと,身分関係から家計が同じ関係といえるし,現実の生活でも家計が同じ関係にある者の過失については,被害者本人の過失と同様の扱いをしますよという理解です。

 

それでは,なぜ,このような取り扱いが認められているのでしょうか。

 

このような取り扱いは,ABC間の賠償請求を一挙に解決するためです。

 

このような取り扱いがないと,示談の解決が面倒になってしまうというのが判例の発想です。

 

このような取り扱いがされない場合の解決方法について,イメージされると理解しやすいと思いますので,以下のケースを想定してください。

 

2 想定ケース

 

例えば,夫Bが運転する車と第三者Cが運転する車が衝突した事故で、Cと夫Bとの双方に過失がある場合(Bの過失20%,Cの過失80%)があるとします。

 

この事故により夫Bの車に同乗する妻Aが怪我をした場合に,妻Aの怪我について法律上野責任を負う人は,事故について落ち度のあるBとCの両方ということになります。

 

3 このケースの示談の流れ

 

①すなわち,妻Aが事故で100万円の損害が発生した場合,妻Aは,法律上,Cに対して,合計100万円を請求できます。

 

次に,②妻Aからの請求に応じて100万円を支払ったCは,Bに対して,払いすぎた賠償金の一部を請求できます。

 

これは,妻Aの損害100万円は,BとCの過失割合に応じて負担しましょうねという法理です。

 

例えば,CがAに対して100万円を支払った場合には,Cは,20%の過失割合があるBに対して100万円×20%を請求できます。

 

以上のように,①Cが,Aに100万円を支払った後,②Aに賠償したCがBに対して,賠償の負担を求めるという2段階の手続きになります。

 

しかしながら,BとAが夫婦であり,財布が共通であるならば,最初からCがAに80万円払えばそれですむのではないかというのが判例の発想です。

 

以上から,裁判例や学説の多数では,「身分上・生活関係上一体をなす者」について,被害者本人と生計を同一にしている者をいうとされています。

 

第三者の過失により賠償額が減額される場合②

弁護士の山田です。

 

前回同様,第三者の過失により賠償額が減額される場合について,説明します。

 

前回は,民事上の過失について一般的な説明をしました。

 

今回は,実際の相談されたケースについての回答をいたします。

 

1 相談されたケース

 

妻Aは,夫Bが運転する車の助手席に乗っていた。

 

夫Bの車が,信号機のない交差点にさしかかったとき,夫Bは左右の安全確認をしないまま,交差点を直進走行した。

 

すると,夫Bの右側の横断道路からC車両が猛スピードで交差点に進入してきたため,夫Bの車とCの車が出会い頭で衝突した。Cは当時居眠り運転をしていた。

 

この事故のために,妻Aは,全身を強く打って大怪我をしてしまった。

警察の話では,Bも注意散漫であった点で事故について落ち度があるが,事故当時居眠り運転をしていたCの落ち度が圧倒的に大きいとのことであった。

 

2 質問

 

この場合,大怪我をした妻Aは,Cに対して,治療費や慰謝料の全額の損害賠償の請求ができるでしょうか。

 

仮に,運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときはどうでしょうか。

 

3 相談されたケースについて

 

結論からいえば,妻Aが加害者Cに対して損害賠償請求をする場合に,夫Bの落ち度についても妻Aの過失と同視して,過失相殺がされる可能性があります。

 

すなわち,夫Bに過失が20%ある場合,妻Aは,加害者Cに対して,総損害の100%を請求できるわけではなく,総損害の80%を請求できることにとどまります。

 

ちなみに,この場合,Cに請求できない損害の20%は,夫Bに請求しろという結論になってしまいます。。。。

 

他方で,Aが同乗する車を運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときは,妻Aは,加害者Cに対して,総損害の100%を請求できます。

 

この結論の違いは,妻Aと運転していた人との関係性の相違により,生じるものです。

 

4 被害者本人と身分上・生活関係上一体の者の過失は過失相殺の対象となる

 

このようなケースについて,最判昭和51年3月25日最高裁判所民事判例集30巻2号160頁は,以下のように判旨しています。

 

被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなす関係にある者の過失(被害者側の過失)をも包含するものと解される。

 

したがって、夫Bが妻Aを同乗させて運転する自動車と第三者Cが運転する自動車とが、第三者Cと夫Bとの双方の過失の競合により衝突したため、傷害を負った妻Aが第三者Cに対して損害賠償を請求する場合,ABの婚姻関係が既に破綻しているなど事情がない限り、夫Aの過失を被害者側の過失として斟酌することができる。

 

この裁判例からすると,被害者本人と身分上・生活関係上一体の者の過失は,過失相殺の対象となり,被害者本人に過失がある場合と同様の扱いを受けてしまいます。

 

それでは,「身分上・生活関係上一体の者」とはどのような場合を指すのでしょうか。

 

これは,次回に譲ります。

第三者の過失により賠償額が減額される場合①

愛知県在住の弁護士の山田です。

 

今回は,民事における過失について,説明いたします。

 

例えば,法律相談で以下のようなケースの相談を受けることがあります。

 

前置きになりますが,この回答は長くなってしまいます。

 

そこで,今回は,前提として民事上の過失について一般的な説明をし,ケースについての回答は次回に譲ります。

 

1 相談されたケース

 

妻Aは,夫Bが運転する車の助手席に乗っていた。

 

夫Bの車が,信号機のない交差点にさしかかったとき,夫Bは左右の安全確認をしないまま,交差点を直進走行した。

 

すると,夫Bからみて右側の横断道路からC車両が猛スピードで交差点に進入してきたため,夫Bの車とCの車が出会い頭で衝突した。Cは当時居眠り運転をしていた。

 

この事故のために,妻Aは,全身を強く打って大怪我をしてしまった。

 

警察の話では,Bも注意散漫であった点で事故について落ち度があるが,事故当時居眠り運転をしていたCの落ち度が圧倒的に大きいとのことであった。

 

2 質問

 

この場合,大怪我をした妻Aは,Cに対して,治療費や慰謝料の全額の損害賠償の請求ができるでしょうか。

 

仮に,運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときはどうでしょうか。

 

3 そもそも民事での過失や過失相殺ってなに?

 

「過失」を平たく言うと,事故という結果が発生する可能性があることをあらかじめ予想できたのに,適切な回避行動を取らなかったことについての落ち度をいいます。

 

要するに,交通事故が発生したことについて,一方当事者にも何らかの落ち度があることを「過失」というというイメージでよいかと思います。

 

交通事故について,民事上の損害賠償請求をする際,過失は「過失割合」という用語で出てくることが一般的です。

 

加害者に対して,民事上,損害賠償請求をする場合,加害者に請求できる賠償金は,「総損害×相手方過失割合」となります。

 

例えば,過失割合が被害者:加害者=10:90で,被害者の総損害(治療費や慰謝料など)が100万円の場合,相手方に請求できる賠償金は100万円×90%=90万円となります。これを過失相殺といいます。

 

過失相殺を簡単に説明すると,事故で怪我を負ったために損害が発生したが,事故について被害者にも落ち度がある場合には,被害者の損害は加害者と被害者自身双方の落ち度があって発生したものだから,加害者が全額損害を賠償するというのはアンフェアだよねという理屈です。

 

4 相談されたケースについて

 

事故の被害にあった人自身に事故に落ち度がない場合には,その人自身には過失がなく,加害者に対して,損害の全額を請求できることになるのが原則です。

 

そうすると,相談されたケースの妻Bについては,運転者夫Aに落ち度があったとしても,妻B自身に過失がない以上,加害者Cに損害の全額を賠償請求できることになるという結論に一見なりそうです。

 

がしかし,実は,そうではありません。

 妻Bが加害者Cに対して損害賠償請求をする場合に,夫Aの落ち度についても妻Bの過失と同視して,過失相殺がされる可能性があるのです。

 

この先は,次回に譲ります。

別居中の夫婦間における子供の監護者と子の連れ去りの対応

弁護士の山田です。

 

今日は近年増加している夫婦関係の問題について説明いたします。

 

1 別居中の夫婦間で問題となる子供の監護のケース

 

離婚は成立していないが、離婚を前提にして別居がされた場合に婚姻関係が続いている場合があります。

 

この夫婦間に未成年の子供がいる場合、主に子供を監護する親をどちらにするか決める必要が出てくることがあります。

 

そこで、今回は、①別居中の夫婦間における子供の監護者の決定方法、②離婚していないが別居中の夫婦間において一方の親が子供を連れ去った場合の対応方法について、ご説明いたします。

 

2 別居中の夫婦間における親権者・監護権者

 

子供の監護については、監護教育権(民法820条)として、親権の一内容として位置づけられます。

 

未成年の子については父母の親権に服するので、原則として、父母の婚姻中、親権は父母が共同して行使することになります(民法818条1号)。

そのため、別居の夫婦の場合でも、婚姻関係が継続している場合には、子供に対する監護権については父母が共同して行使することになります。

 

3 別居中の夫婦間での監護者の決定をする場合がある

 

しかしながら、別居の場合の事実上の子どもに対する監護者の取り決めをする必要がある場合も少なくありません。

 

夫婦間で監護者の取り決めの合意がまとまる場合には、その合意に基づいて監護者を取り決めることで足ります。

 

しかしながら、監護者の合意がまとまらない場合には、監護者の指定を求める審判(家事39条・別表2第3項)により、監護者を定めることになります。

 

4 別居中の夫婦での子供の連れ去り

 

すでに述べたとおり、別居の夫婦の場合でも、婚姻関係が継続している場合には、子供に対する監護権については父母が共同して行使することになります。

 

それでは、別居中の夫婦間において、一方の親が、他方の親の下にいる子供を勝手に連れ去ってしまった場合、連れ去った親に対して子供の引き渡しを求めることはできないのでしょうか。

 

結論から言えば、法的手続きにより、子の監護権者の指定及び子の引き渡しを求めることができます。

 

5 子の監護権者の指定及び子の引き渡しを求める法的手続き

 

子の監護権者の指定及び子の引き渡しは、「子の監護に関する処分」にあたり、審判事項とされますので(家事39条・別表第3項)、調停又は審判を申し立てることになります。

 

また、子の引き渡しを求める手続きをとる場合、それが緊急を要する場合も少なくありません。

 

そこで、このような場合には、調停又は審判の確定前に、「婚姻等に関する審判事件を本案とする保全処分」として、子の引き渡しの仮処分を申し立てることも可能です。

事故にあわれた方の家族の慰謝料

まだまだ寒い日が続いていますね。

 

名古屋駅の弁護士の山田です。

 

今日は事故にあわれた方の家族の慰謝料についてご説明いたします。

 

1 交通事故の被害者家族の慰謝料

 

交通事故被害者が死亡したり,あるいは,重篤な症状を負った場合,交通事故被害者家族も,精神的・肉体的苦痛を受けることがあります。

 

このような場合に,交通事故被害者の慰謝料はもちろん,交通事故被害者家族の固有の慰謝料が支払われることがあります。

 

2 交通事故被害者が死亡した場合

 

交通事故被害者が事故により死亡した場合,被害者家族にも固有の慰謝料が支払われることがあります。

 

民法711条では,被害者の父母,配偶者及び子が,固有の慰謝料を請求することを認めています。

 

固有の慰謝料の額について,自賠責保険での支払いの場合には,自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準で定められています。

 

その基準に従うと,請求権者が1人の場合には550万円,2人の場合には650万円,3人以上の場合には750万円となります。被害者に被扶養者がいる場合には,上記金額に200万円が加算されます。

 

他方で,裁判基準での慰謝料交渉をすることも考えられます。

 

裁判基準(弁護士基準)は,今までの裁判例の傾向を踏まえて計算される基準です。

 

計算方法は,通称青本と呼ばれる「交通事故損害額算定基準」(日弁連交通事故相談センター本部)や通称赤本と呼ばれる「民事交通訴訟 損害賠償額算定基準」という本に掲載されています。

 

裁判基準は,過去の裁判例の傾向等を分析して定められたあくまで目安の基準であり拘束力はありませんが,示談交渉や裁判などの法的手続では参考にされる目安基準になります。

 

裁判基準は,一般的に慰謝料は自賠責基準や任意保険基準よりも額が大きくなります。

 

裁判基準では,被害者が死亡した場合には,被害者固有の慰謝料と近親者の慰謝料を合わせた計算になります。

 

赤本を例にすると,被害者が一家の支柱である場合には2800万円,被害者が母親・配偶者の場合には2500万円,その他の場合には2000万円~2500万円が一つの目安になります。

 

3 交通事故被害者が重篤な症状を負った場合の慰謝料

 

交通事故被害者が死亡した場合でなくとも,被害者家族の慰謝料が認められる場合もあります。

 

しかし,判例は,すべての場合に慰謝料を認める立場ではなく,被害者が生命を害された場合に比肩するか,もしくは,生命を害された場合に比して著しく劣らない程度の精神的苦痛を受けた場合について認める立場に立っています。

 

この裁判例を踏まえて,実務上は,被害者が死にも比肩するべき重度の後遺障害を負った場合には近親者にも慰謝料の請求を認める扱いがされています。

 

また,裁判例のなかには,障害等級が4級以下の場合でも,後遺障害の内容・程度によっては,近親者の慰謝料を認める例もあります。

 

慰謝料の額については,後遺障害の内容や程度によって判断されるため,定額化された基準はありません。

交通事故の過失割合

寒い日が続きますね。弁護士の山田です。

 

今日は,交通事故における民事上の過失割合についてご説明いたします。

 

とはいっても,過失割合は事故状況に従って判断されるので,ここで全てを説明することは不可能です。

 

そのため,過失の判断方法やその証拠となる資料について簡単ではありますが,ご説明いたします。

 

1 民事上の過失とは

 

交通事故など民事で使われる「過失割合」とは、民事上の賠償金などの算定にあたって考慮するべき事故の原因や責任の割合のことを指します。

 

刑事の過失は,刑事責任を問うべき過失があるかどうかという判断であり,見解は分かれますが,刑事上の過失と民事上の過失は,必ずしも同一の意義とはいえない場合があります。

 

2 民事上の過失割合の意味

 

交通事故が起きた場合,加害者が100%悪いケースもあれば,被害者にも少なからず過失がある場合もあります。

 

そして,被害者の方にも過失がある場合に,加害者の側が損害を全て負担するというのは不公平になります。

 

そこで,事故の原因や責任を「過失割合」という数字で比率化し,この過失割合の大小により損害賠償金の負担を決めていきます。

被害者の過失割合が低いほど被害者が受け取れる損害賠償金は高くなります。

 

3 過失割合は証拠から認められる事実を踏まえて判断される

 

過失割合を決める場合,証拠から認められる事実を踏まえて事故状況を判断し,過失割合を決めていきます。

 

そのため,過失割合の主張については,どのような証拠があるかということが重要になってきます。

 

一般的に使用される証拠としては,当事者の供述,目撃者の証言,警察が作成する実況見分調書,車両の損傷状況のわかる資料,ドライブレコーダー,鑑定証拠などがあります。

 

この中でも,重要視されているのが,警察が作成する実況見分調書です。

 

ただし,警察の実況見分調書は,人身事故の場合で,かつ,警察に診断書を提出しなければ作成されません。

 

そのため,人身事故の場合には,警察に診断書を提出することをお勧めしています。

 

4 ドライブレコーダーを搭載すべきか?

 

ご相談にのっているときに,ドライブレコーダーを搭載した方がよいかと聞かれることがあります。

 

私としては,搭載することをお勧めします。

 

ドライブレコーダーを搭載しておくと、過失割合の認定に役立つことがあります。

 

ドライブレコーダーは、信号機の色や衝突の際の状況、方向やお互いの車のスピード、車間距離なども記録してくれるので、交通事故の重要な資料となります。

 

そのため,交通事故が起きた場合,車に搭載されているドライブレコーダーの映像を確認することが重要です。

 

弁護士法人心では交通事故問題に力を入れて取り組んでいます。

 

婚姻費用について

 

 

名古屋も寒さが増してきましたね。

 

今回は婚姻費用についてご説明いたします。

 

1 婚姻費用とは

 

結婚している夫婦は,その居住費や生活費を分担する義務を負っています。

 

ところが,関係が悪化し別居する場合,居住費や生活費の分担が行われず,一方の当事者が困窮するというケースがあります。

 

典型的な例としては,夫と妻の収入に格差があるにもかかわらず,家を出た夫が妻に生活に必要なお金を払わないため,妻の生活が困窮するケースです。

 

このような場合に,収入の少ない当事者が,他方当事者に対して,離婚が成立するまでの間の居住費・生活費(婚姻費用)を請求できる場合があります。

 

2 婚姻費用の額

 

婚姻費用として請求できる額は,現実に負担している居住費・生活費の全てというわけではありません。

 

婚姻費用は,①当事者双方の収入,②同居している子供の年齢と人数,③特別に考慮するべき事情を踏まえて,算定されます。

 

裁判所などの実務上では,婚姻費用の算定は,裁判所の「養育費・婚姻費用算定表」に基づいて,決定されることが多いです。

 

もっとも,算定表に基づく場合でも,特別な事情がある場合には別途の考慮がなされます。

 

3 婚姻費用の支払対象期間(請求の始期・終期)

 

最高裁(最決昭和40年6月30日民集19巻4号1114頁)では,過去に遡って婚姻費用の分担の審判ができる旨判旨していますが,請求の始期について裁判例は,要分担状態発生時と申立時とで見解が二分されていて,確立した裁判例はありません。

 

もっとも,実務上は,申立時から請求することが多いです。これは,要分担状態発生時とした場合,その時点を特定できる資料が乏しいことが多いためです。

 

請求の終期については,離婚が成立した場合あるいは別居関係が解消した時点であることが一般的です。

 

4 請求の手続き

 

婚姻費用の請求については,当事者間(代理人となる弁護士を交えた場合を含む)の合意に基づく場合,裁判所の調停又は審判の申立をする場合があります。

 

どのような手続きを選択するかについては,ケースバイケースになりますので,打ち合わせを通じて決定していくことが多いです。

 

5 婚姻費用の請求は離婚や親権問題も問題になりうる

 

婚姻費用の請求をする場合の多くは婚姻関係が破綻しているあるいは冷え込んでいる場合になります。

 

そのため,婚姻費用の問題にとどまらず,関連して,相手方より,離婚を要求されたり,離婚に伴う親権問題の対応が必要になってくるケースも珍しくありません。

 

 

 

高次脳機能障害

名古屋駅の弁護士の山田です。

最近寒さが増しておりますが,いかがお過ごしでしょうか。

 

今回は,高次脳機能障害について,ご説明いたします。

 

1 高次脳機能障害

 

高次脳機能障害とは,外傷性損傷・脳血管障害等により,脳に損傷を受け,その後遺症として生じた記憶障害・注意障害・社会的行動障害などの認知障害等をいいます。

 

自賠責保険においては,「脳外傷による高次脳機能障害の等級認定にあたっての基本的な考え方と労働能力喪失率」の表に従い,後遺障害の等級認定が定められています。

 

2 高次脳機能障害の等級認定

 

「脳外傷による高次脳機能障害の等級認定にあたっての基本的な考え方と労働能力喪失率」の表では以下のとおりです。

 

自賠法施行令 補足的な考え方
1級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために,生活維持に必要な身の回りの動作に全面的介護を要するもの
2級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって,1人では外出することができず,日常の生活範囲は自宅内に限定されている。

身体動作的には排泄,食事などの活動を行うことができても,生命維持に必要な身辺動作に,家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの

3級3号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの 自宅周辺を1人で外出できるなど,日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また,声掛けや,介助なしでも日常の動作を行える。しかし,記憶力や注意力,新しいことを学習する能力,障害の自己認識,円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって,一般就労が全くできないか,困難なもの
5級2号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 単純繰り返し作業などに限定すれば,一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり,環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており,就労の維持には,職場の理解と援助を欠かすことができないもの
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服することができないもの 一般就労を維持できるが,作業の手順が悪い,約束を忘れる,ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行うことができないもの
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 一般就労を維持できるが,問題解決能力などに障害が残り,作業効率や作業持続力などに問題があるもの

 

上記表はあくまで参考であり,これ以外の等級の可能性もありえます。

 

例えば,その障害の程度によっては12級や14級に止まることもあります。

 

また,画像所見の有無などによっては,後遺障害が非該当とされる場合もあります。

 

3 高次脳機能障害について詳しい弁護士に相談するべき

 

高次脳機能障害の特徴としては,医師や看護師でさえも見逃しやすい症状であるという点に特徴があります。

 

なぜなら,高次脳機能障害の症状である認知能力の低下や人格変性は,事故前の様子との比較で判断しなければ,判断ができませんが,医師や看護師は,被害者の事故前の様子を把握していないため,事故前後の「変化」について,判断をすることが難しいからです。

 

そのため,交通事故の後遺障害の等級認定では,細かい認定基準が設けられており,後遺障害の申請をする可能性があるときは,高次脳機能障害の特徴や後遺障害の認定基準に詳しく経験のある弁護士でなければ,適切なサポートができません,

 

高次脳機能障害に詳しくない弁護士のサポートを受けても,かえって逆効果になり,適切な等級認定がされない可能性があります。

 

そのため,高次脳機能障害にあわれた場合には,交通事故に詳しい弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。

 

4 高次脳機能障害は適切な後遺障害等級認定をされることが重要

 

高次脳機能障害で適切な賠償金を受け取るためには,適切な後遺障害の認定を受けることが重要です。

 

そのため,高次脳機能障害にあわれた方は,お早目に,弁護士に相談されるとよいと思います。

労災保険と交通事故

名古屋の弁護士の山田です。

 

前回は交通事故の賠償保険のお話をいたしました。

 

今回は,労災保険と交通事故についてご説明いたします。

 

1 通勤中の交通事故でも労災を使える

 

労災保険(労働者災害補償保険)は、労働者が業務中や通勤途中に負傷したり病気になったり障害が残ったり死亡したりした際に、労働災害を認定して補償をしてもらえる保険のことです。

 

労災保険が利用できる場合としては,業務中の事故(業務災害)と自宅と職場の通勤途中の事故(通勤災害)があります。

 

そのため,交通事故が,業務中の事故(業務災害),あるいは,自宅と職場の通勤途中の事故(通勤災害)の場合には,労災保険を利用できます。

 

 

もっとも,通勤途中の交通事故の場合でも,事故の場所や時間によっては認められない可能性もあります。

 

たとえば,会社に向かう途中や帰宅途中に,どこかに立ち寄って別の私的な用事をしていた場合などには、労災とは認定されない可能性があります。

 

なぜなら,労災認定の要件として,「自宅と会社との間を合理的な経路や方法で往復していた」ときの交通事故であることが必要であるためです。

 

2 労災の申請手続

 

労災保険を利用したい場合には、管轄の労働基準監督署に宛てて、労災の申請をします。

 

管轄の労基署に連絡をして、必要書類を作成して提出し、労災認定を受けましょう。

 

労災保険の申請方法について,会社の総務や人事など労災に詳しい担当者や弁護士に確認してみるのも一つです。

 

3 労災保険と自賠責保険・任意保険との関係

 

交通事故の場合に,労災保険を使うかどうかは,判断が難しいポイントです。

 

交通事故後の通院治療には,一般的には,自賠責保険や任意保険を利用することも少なくありません。

 

そのため,業務中の事故や通勤途中の交通事故の場合でも,労災保険を利用しないケースもあります。

 

もっとも,以下のケースの場合には,労災保険を使った方がよいケースになります。

 

4 相手が任意保険に加入していない場合

 

自賠責保険の場合、補償される金額の上限が決まっていて,例えば,傷害事故の場合は120万円までという上限額があります。

 

治療費がかさんでくると、120万円では足りないことがありますが,この場合,120万円を超えた場合は,被害者が一度立て替えた上で,相手方に直接請求しなければならないことがあります。

 

他方で,労災保険では、特に上限の金額があるというわけではありませんので,怪我によってかかった治療費を、全額負担してもらうことができます。

 

そのため、労災保険を利用すると、相手方が任意保険に加入していない場合でも,全額の治療費の支給を受けることができます。

 

また,上記の理由から,相手方が自賠責保険にすら加入していない場合にも,労災保険を使うとよいと思います。

 

5 被害者にも一定の過失がある場合

 

自賠責保険の場合,自分の過失が7割以上になると、重過失減額が行われます。

 

また,自賠責保険の120万円を超えて,任意保険が使用される場合には,治療費や慰謝料などの損害について過失相殺の対象になります。

 

他方で,労災保険には重過失減額がありません。

 

そのため,被害者に一定の過失がある場合には,労災保険を使うとよいケースといえます。

 

6 交通事故と労災保険については交通事故に詳しい弁護士に相談してください

 

労災保険と交通事故について,インターネットでもよく見かける記事ですし,被害者の方の関心も強い内容になります。

 

他方で,労災保険を利用するべきケースかどうかは,個別具体的状況を踏まえる必要がありますので,インターネットのサイトだけでは,十分な判断材料になりません。

 

そのため,労災保険を利用する場合については,交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

 

交通事故の賠償責任保険の制度

1 交通事故の賠償保険は2段階になっている

 

交通事故の賠償責任保険の仕組みは,2段階になっています。

 

自動車賠償責任保険(自賠責保険)と任意保険の2段階です。

 

1段階目は,自賠責保険であり,被害者の最低限の補償を図るための強制保険です。強制保険であるため,補償内容は最低限になります。

 

例えば,後遺障害の認定があるケース及び死亡事故のケース以外の事故の場合,,治療費や慰謝料などを合わせて120万円の上限の設定があります。

 

そのため,事故による怪我が大きい場合,自賠責保険の補償では十分な補償になりません。

 

この場合,2段階目として,自賠責保険の保険金額を超過した部分の補償について任意保険が対応することになります。

 

2 自賠責保険の補償の手続きと被害者請求

 

このように,被害者の補償は,原則論は,まずは自賠責保険による補償がされることになり,自賠責保険の補償額が上限に達して初めて任意保険が対応することになります。

 

ここで注意が必要なのは,自賠責保険と任意保険はあくまで別の制度になるということです。

 

すなわち,自賠責保険の補償を受ける場合,原則として,被害者が治療費を立て替え,その立替費用を自賠責保険に請求する必要があります。

 

これを自賠責保険の被害者請求といいます。

 

自賠責保険の手続上,原則の手続きは被害者請求になりますが,実務上の多くは,被害者請求の手続きをとっていません。

 

それは,以下で説明する加害者の任意保険会社による一括払い対応がされているからです。

 

3 一括払い対応とは

 

自賠責保険と任意保険は,あくまで別の制度であるため,保険金の請求のためには,原則として二種類の手続きを踏む必要があります。

 

しかし,被害者は,自賠責保険会社と任意保険会社のそれぞれに対して請求を行うとなると二度手間となります。

 

そこで,加害者加入の任意保険会社が,自賠責保険による補償部分を立て替えるという形で,治療費などを通院先の病院へ支払を行うのです。

 

これを一括払い対応といいます。

 

4 一括払い対応のメリット・デメリット

 

一括払い対応には,被害者側にも加害者側にもメリットがあります。

 

被害者としては,面倒な手続きから解放され,治療に専念できるというメリットがあります。

 

加害者側のメリットとしては, 任意保険会社としては,被害者から同意書をもらったうえで,病院に対して,被害者の怪我の具合や治療内容などを確認して,賠償の見通しを立てることができるというメリットがあります。

 

そのため,交通事故で怪我をした場合,一括対応になるケースが少なくありません。

 

5 被害者請求を検討する場合

 

一括払いが行われたとしても,加害者加入の保険会社が,治療費の支払を認めたことにはならない点に注意が必要です。

 

治療内容や治療時期について,被害者と加害者加入の保険会社の見解に争いが生じ,加害者の任意保険会社が治療費の支払いを拒絶することがあります。

 

その場合には,自賠責保険に被害者請求をするという方法が有効な場合もあります。

 

6 被害者請求の注意点

 

被害者請求をする場合,前提として,今までの治療費などの合計が自賠責保険の補償額の上限に達していないことが必要です。

 

また,自賠責保険の支払いにも審査がありますので,被害者請求をすれば絶対に保険金が支払われるというわけではありません。

 

事故状況,怪我の症状,治療状況や主治医の治療方針などの事情によっては保険金の支払いがされない可能性もあります。

 

そのため,被害者請求については,交通事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

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車両の損害賠償について

名古屋駅から徒歩0.5分の距離に事務所がある弁護士の山田です。

 

今日は,車両の損害賠償について,ご説明したいと思います。

 

物損の示談交渉では,主に,車両の損害(修理代金や時価額など),レッカー代,レンタカー費用などが,対象になります。

 

その中でも,車両の損害については,示談交渉のなかで,争われることが少なくありません。

 

1 まずは全損かどうかの判断を

 

交通事故賠償実務では,車両の損害額の判断の前提として,車両の修理が可能か,不能か(全損か)の判断をすることになります。

 

修理可能か,修理不能かによって,修理額を賠償するのか,あるいは,時価額を限度として賠償するのか,賠償の範囲が異なってくるためです。

 

最高裁判所の判例(最判昭和49・4・15交民7・2・275)では,全損にあたる例として,以下の3つのケースを指摘しています。

 

①物理的に修理ができない場合(物理的修理不能)

②修理費用が事故前の事故車両の時価等を上回る場合(経済的修理不能)

③車体の本質的構成部分に重大な損傷が生じたとき

 

以上のケースを踏まえて,車両の損害額の判断の前提として,事故により車両が全損にあたるかどうかを判断するべきことになります。

 

ただし,多くのケースでは,②の修理費用が事故前の事故車両の時価等を上回る場合(経済的全損)にあたるかどうかが問題になりますので,全損かどうかの判断は,多くの場合,修理代金が車両の時価額を上回るかどうかがポイントになります。

 

そのため,車両の損害額については,修理代金と時価額を意識する必要があります。

 

修理代金については,車両の修理業者(車屋さんや修理工場など)が出してくれる修理見積書などでおおよその確認ができます。

 

他方で,時価額については,裁判でも争われることが多く,一概に判断できない場合もあります。

 

そこで,以下,時価額の算定方法について説明いたします。

 

2 時価額の算定方法

 

時価額の算定方法について,最高裁判所の裁判例(最判昭和49・4・15交民7・2・275)では,以下のように説明しています。

 

車両の時価額の判断については,「事故車両と同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するに要する価格によって判断する」。

 

要するに,事故車両と同じような車両の中古車市場価格で判断するということですが,具体的にどのような資料や情報から車両の中古車市場価格を判断するかについては,一般的に3つの方法が提案されています。

 

①「オートガイド自動車価格月報」(レッドブック)での判断

②インターネットの中古車市場サイトの情報に基づく判断

③新車価格の10%での判断

 

ここで問題なのは,3つの計算方法のいずれを採用するかによって,事故車両の時価額が大きく異なってくることがあります。

 

時価額については,裁判や示談交渉でも争われることが多いのも,3つの方法のうち,どの方法によるかで争いになることがあるからです。

 

3つの方法のうちどれが適切なのかは,ケースバイケースのため,確立した考えはありません。

 

私の印象では,裁判所は,①の「オートガイド自動車価格月報」(レッドブック)を重視する傾向があるようにも感じますが,やはりケースバイケースかなと考えています。

 

3 車の損害について納得がいかないときは自分の車両保険という選択肢もある

 

以上のように,全損として時価額での賠償となった場合には,時価額で争いになり,満足のいく賠償が受けられないケースもあります。

 

ご自身が契約されている自動車保険に車両保険の付帯がある場合には,車両保険を使うことも選択肢になります。

 

上記で述べた時価額の判断は,相手の対物保険を使う場合など相手方に賠償請求する場合が前提です。

 

これと異なり,車両保険の場合は,保険契約に従って,保険金が支払われることになります。

 

そのため,時価額の判断で納得がいかない場合には,車両保険を使うとどうなるかについて,自分の保険会社の担当者に問い合わせてみるとよいかもしれません。

 

車両保険については,使用により,等級ダウンなどの不利益がある場合もあるので,その点も踏まえて,判断することをお勧めします。

 

休業損害

名古屋駅から徒歩0.5分の距離に事務所がある弁護士の山田です。

 

今日は,休業損害について,ご説明したいと思います。

 

1 休業損害とは

 

休業損害は,交通事故が原因で仕事ができなくなったことにより,得られなかった収入相当額を補償するものです。

 

休業損害の計算方法については,大きく2通りの計算方法があります。

 

2 休業損害の計算方法①

 

1つ目の方法は,事故前の収入と事故後の収入の差額分のうち,交通事故の怪我による休業と因果関係のある減少分を,休業損害として請求するものです。

 

減少分を直接把握して請求する方法であり,いわば直接的な計算方法になります。

 

この方法は,事故前の収入及び事故後の収入の資料があれば,収入の減少分を明らかにすることが容易であり,シンプルな計算方法になるという点がメリットです。

 

他方で,立証が不十分になる可能性があるという点がデメリットになります。

 

すなわち,休業損害は,事故前と事故後の収入の差額分のうち,交通事故の怪我による休業と因果関係のある減少分について請求できるものです。

 

そのため,自営業などのように,毎年,あるいは,毎月の収入に変動がある場合,交通事故の有無にかかわらず,収入の減少が生じることも当然に想定できます。

 

従って,事故前と事故後の収入の差額のうち,交通事故の怪我による休業と因果関係のある減少分をどのように把握するかという立証上の問題が生じることがこの方法の弱点です。

 

3 休業損害の計算方法②

 

2つ目の方法は,事故前の収入から1日当たりの日給を算出し(基礎収入といいます),日給×休業日数に相当する額を休業損害として請求するものです。

 

この方法は,勤務先や元請会社が休業損害証明書を作成してくれる場合,また,事故前年分の確定申告書がある場合に,日給を容易に算出できる点がメリットです。

 

休業損害証明書には交通事故による怪我のための欠勤日や遅刻早退日数も記載されるため,勤務先や元請会社が休業損害証明書を作成してくれる場合には,休業損害証明書に従った休業損害を請求することができるという点もメリットになります。

 

他方で,特に自営業など定まった勤務日がない場合には,休業日数をどのように計算するかが争われる可能性もあります。

 

この場合,休業日数は一般的に仕事を休んだ日をもとに計算されますが,治療期間や通院日数をもとに計算されることもあります。

 

4 休業損害で注意するべき点

 

休業損害を請求するためには,休業の必要性が認められることが必要です。

 

休業の必要性は,仕事内容や怪我の具合,医師の診断などから,交通事故の怪我により仕事を休むことが必要であることをいい,休業損害証明書がある場合でも,休業の必要性が争われる場合もあります。

 

例えば,欠勤をしている場合でも,「怪我や通院状況からすれば,欠勤までする必要はなく,せいぜい通院のために遅刻や早退をする程度である」,あるいは,「そもそも遅刻早退すら不要である」という判断がされる場合もあり,休業損害が支払われない場合もあります。

 

このように休業損害は,相手方と争われることも多く,被害者の方がご自身で交渉しても,適切な賠償がされないことも珍しくありません。

 

交通事故で休業損害が発生した場合には,一度,弁護士に相談してみてもよいかもしれません。

 

 

後遺障害の申請方法について

1後遺障害について知っていますか

 

交通事故に関する書籍やインターネット上の記事を見たことのある方は,「後遺障害」という言葉を目にしたことがあるかもしれません。

 

「後遺障害」について必ずしも定まった定義があるわけではありませんが,一般的に,「これ以上治療を続けても症状の改善が望めない状態(症状固定)になったときに存在する障害」といわれています。

 

今日は,後遺障害の申請方法についてご説明いたします。

 

2後遺障害を認定するのは自賠責調査事務所

 

後遺障害の等級を認定するのは主治医ではありません。

 

後遺障害の認定にあたり,主治医が作成する後遺障害診断書が判断資料にされますが,認定自体は保険料率算出機構あるいはその下部組織である調査事務所がおこないます。

 

3後遺障害の申請方法は

 

後遺障害を申請する場合,①加害者が加入する任意保険会社が資料をまとめて調査事務所に後遺障害を申請する事前認定の方法,②被害者自らが資料をまとめて調査事務所に後遺障害を申請する被害者請求(自賠法16条に基づく直接手続の請求)の2つの方法があります。

 

4事前認定のメリット・デメリット

 

加害者の任意保険会社が後遺障害を申請する事前認定の場合,任意保険会社の担当者が資料をまとめて申請手続をしてくれるため,被害者自身は手続の準備に手間取らないというメリットがあります。

 

他方で,申請手続に被害者が関与せず,加害者の保険会社の担当者が申請手続をするので,申請する際の資料のなかに被害者の症状について誤った情報が記載されていても,被害者がそれに気づいて訂正することは難しいというデメリットがあります。

 

5被害者請求のメリット・デメリット

 

被害者請求の場合,被害者の側で資料を準備することになるので,資料のなかに誤った情報があってもそれを訂正することができます。

 

他方で,後遺障害の申請には,専門的な知識やノウハウが要求されるため,被害者自らが資料を準備して申請をすることは大変で現実的ではありません。

 

もっとも,後遺障害の申請を弁護士に依頼すれば,そのようなデメリットを防ぐことができ,被害者請求のメリットである被害者の症状を正確に伝える資料を準備することができます。

 

また,被害者請求で後遺障害の等級認定がされた場合,示談を待たずに,自賠責保険より,賠償金の一部が支払われます。

 

そのため,被害者請求の方が,被害者救済に資するといえます。

 

6後遺障害について注意したいこと

 

後遺障害は,申請方法だけではなく,後遺障害の申請の時期など,専門性が要求されます。

 

そのため,後遺障害の申請を考えている場合には,一度,交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。

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相手の保険会社に治療費を打ち切ると言われたら

名古屋駅から徒歩0.5分の距離に事務所がある山田です。

 

インターネットでは,保険会社から治療費がいつまで払われるのか説明するサイトはたくさんありますが,打ち切りを告げられた場合の対処方法について説明している記事は,あまりみかけません。

 

そこで,まだ痛みがあって治療を続けたいのに保険会社から治療費の打ち切りを告げられてしまった場合の対処方法についてご説明いたします。

 

1治療費を支払ってもらえるのはいつまでか

 

そもそも,交通事故による怪我の治療費は,怪我が症状固定に至るまで支払ってもらえます。

 

症状固定とは,治療を受けても怪我の症状がよくならない状態や,治療の効果が一時的で症状が一進一退になっている状態をいいます。

 

言い換えれば,治療により症状が右肩上がりでよくなっていれば,症状固定ではなく,相手の保険会社から治療費を支払ってもらえます。

 

しかし,治療によっても効果が一時的で症状が一進一退な状態であれば,症状固定として相手の保険会社から治療費の支給が打ち切られ,その後の治療は自己負担となります。

 

言い換えれば,怪我が完治していなくても治療費を打ち切られてしまうということです。

 

そのため,交通事故の怪我が症状固定しているかどうかは,治療費の支払いにとって重要なポイントになります。

 

2 保険会社が不当に打ち切りをする場合,主治医の意見を聞いて保険会社と交渉する

 

症状固定の判断は,医学的な側面だけではなく法律的な判断もありますから,症状固定の判断は裁判所が行いますが,裁判所の判断には主治医の診断や意見が重要視されています。

 

そのため,保険会社も,主治医の症状固定についての判断を重視していることが多く,主治医が症状固定に至っていないと判断している場合には,保険会社は打ち切りを延長して,治療費を支払ってくれる場合があります。

 

したがって,保険会社から不当に打ち切りを告げられた場合には,速やかに主治医の症状固定の判断を確認し,保険会社に主治医の意見を伝えて打ち切りの延長を交渉することが考えられます。

 

3保険会社が打ち切りの延長に応じない場合

 

主治医が症状固定に至っていないと判断しているにもかかわらず,保険会社が打ち切りの延長に応じない場合,示談段階で治療費の支払いを求めたり,訴訟を提起して治療費の支払いを求めることになります。

 

ただし,この場合,保険会社から支払いを受けるのは,示談の合意,あるいは,裁判の結果がでてからになるので,それまでの間は,第三者傷病届を提出して健康保険を使うなどして,一時的に治療費を自己負担する必要があります。

 

もっとも,通勤中の事故や業務中の事故の場合には,労災への切り替えも選択肢の1つになります。

 

労災の申請が認められると,症状固定日までの治療費を全額支給してくれますから,被害者の自己負担はありません。

 

4不当に交通事故の治療費の打ち切りをされた場合には弁護士に相談してください

 

症状固定の時期は慰謝料にも関わってきますのでとても重要です。

 

痛みが残っているのに治療費の打ち切りを告げられた方などは,一度交通事故に詳しい弁護士に相談されるのをお勧めします。

 

また,医師が症状固定と判断する前に治療費の打ち切りを告げられないようにするためには,医師に症状を正確に伝えるだけでなく,保険会社との適切な対応をすることが重要です。

 

保険会社対応などに不安がある方は,事故直後の早い段階から,一度,交通事故に詳しい弁護士に相談するのをお勧めします。

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交通事故で車が壊れた場合のレンタカー代

名古屋駅から徒歩0.5分の距離に事務所がある山田です。

 

暖かくなって過ごしやすい時期になってきたように思いますが,皆さんはいかがでしょうか。

 

さて,今回は,交通事故で車を修理したり,車を買い替える場合の,レンタカー代(代車代)についてご説明いたします。

 

1 事故で車を修理に出したときの代車代はいつまで?

 

交通事故により自動車が故障した場合,自動車を修理に出したり,買い替えなければならないことになります。

 

修理や買い替えまでの間,車を使用する必要があるときには,レンタカーなどの代車を借りることになりますが,この代車代は,事故の相手方や相手の保険会社に請求できる場合があります。

 

それでは,代車代はどれくらいの期間支払ってもらえるのでしょうか。

 

2 代車代が支払われる期間は限られている

 

裁判例などをみると,代車代を支払ってもらえる期間は,「修理可能な場合には修理に必要な相当期間,買替が必要な場合には買替に必要な相当な期間」と考えられています。

 

ここで,注意が必要なのは,実際に修理や買替が終わるまでの間のレンタカー代を支払ってもらえるわけではなく,「相当な期間」が経過すれば,修理や買替が終わっていなくても,代車代は支払ってもらえなくなってしまうという点です。

 

それでは,「相当な期間」とはどれくらいの期間をいうのでしょうか?

 

3 修理をする場合の「相当な期間」は1週間から2週間が目安

 

故障した車を修理する場合,修理の箇所や方法などにもよりますが,代車代が支払われる期間は,およそ1週間から2週間程度が目安と言われています。

 

4 買替をする場合の「相当な期間」は2週間から1か月が目安

 

故障した車を買い替えることになった場合,代車代が支払われる期間は,2週間から1か月が目安と考えられています。

 

5 代車の使用には注意が必要

 

このように,代車代が支払われる期間は限られており,「相当な期間」を過ぎてなお,代車を使用する場合には自己負担になる可能性があります。

 

たまに,示談が成立するまで修理に出さず,代車を借り続ける方がいますが,これは代車代の自己負担額が増える危険があり,注意が必要です。相手と修理代金や過失割合に争いがある場合でも,早めに修理や買替えをして,代車代の自己負担額が増えないようにする必要があります。

 

6 レンタカーが保険会社や車屋さんからサービスされる場合もある

 

以上の話は,法律上,相手方に対してレンタカー代(代車代)を請求できる場合についての説明です。

 

しかし,中には,保険会社さんや車屋さんから,サービスとして,長期間,無料で,レンタカーを貸してもらえる場合もあります。

 

そのため,車屋さんや相手の保険会社の担当者から,レンタカーの話が出た場合には,どれくらい借りられるのか,レンタカー代はどうなるのかについて,確認しておかれるとよいと思います。

 

7 代車代については,一度弁護士に相談してみてください

 

代車代が支払われる「相当な期間」には,相手や保険会社との交渉期間も含まれることがあります。

 

代車代が支払われる期間について,不安がある場合には,交通事故に詳しい弁護士に一度相談してみてください。

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