車両の損害賠償について

名古屋駅から徒歩0.5分の距離に事務所がある弁護士の山田です。

 

今日は,車両の損害賠償について,ご説明したいと思います。

 

物損の示談交渉では,主に,車両の損害(修理代金や時価額など),レッカー代,レンタカー費用などが,対象になります。

 

その中でも,車両の損害については,示談交渉のなかで,争われることが少なくありません。

 

1 まずは全損かどうかの判断を

 

交通事故賠償実務では,車両の損害額の判断の前提として,車両の修理が可能か,不能か(全損か)の判断をすることになります。

 

修理可能か,修理不能かによって,修理額を賠償するのか,あるいは,時価額を限度として賠償するのか,賠償の範囲が異なってくるためです。

 

最高裁判所の判例(最判昭和49・4・15交民7・2・275)では,全損にあたる例として,以下の3つのケースを指摘しています。

 

①物理的に修理ができない場合(物理的修理不能)

②修理費用が事故前の事故車両の時価等を上回る場合(経済的修理不能)

③車体の本質的構成部分に重大な損傷が生じたとき

 

以上のケースを踏まえて,車両の損害額の判断の前提として,事故により車両が全損にあたるかどうかを判断するべきことになります。

 

ただし,多くのケースでは,②の修理費用が事故前の事故車両の時価等を上回る場合(経済的全損)にあたるかどうかが問題になりますので,全損かどうかの判断は,多くの場合,修理代金が車両の時価額を上回るかどうかがポイントになります。

 

そのため,車両の損害額については,修理代金と時価額を意識する必要があります。

 

修理代金については,車両の修理業者(車屋さんや修理工場など)が出してくれる修理見積書などでおおよその確認ができます。

 

他方で,時価額については,裁判でも争われることが多く,一概に判断できない場合もあります。

 

そこで,以下,時価額の算定方法について説明いたします。

 

2 時価額の算定方法

 

時価額の算定方法について,最高裁判所の裁判例(最判昭和49・4・15交民7・2・275)では,以下のように説明しています。

 

車両の時価額の判断については,「事故車両と同一の車種・年式・型・同程度の使用状態・走行距離等の自動車を中古車市場において取得するに要する価格によって判断する」。

 

要するに,事故車両と同じような車両の中古車市場価格で判断するということですが,具体的にどのような資料や情報から車両の中古車市場価格を判断するかについては,一般的に3つの方法が提案されています。

 

①「オートガイド自動車価格月報」(レッドブック)での判断

②インターネットの中古車市場サイトの情報に基づく判断

③新車価格の10%での判断

 

ここで問題なのは,3つの計算方法のいずれを採用するかによって,事故車両の時価額が大きく異なってくることがあります。

 

時価額については,裁判や示談交渉でも争われることが多いのも,3つの方法のうち,どの方法によるかで争いになることがあるからです。

 

3つの方法のうちどれが適切なのかは,ケースバイケースのため,確立した考えはありません。

 

私の印象では,裁判所は,①の「オートガイド自動車価格月報」(レッドブック)を重視する傾向があるようにも感じますが,やはりケースバイケースかなと考えています。

 

3 車の損害について納得がいかないときは自分の車両保険という選択肢もある

 

以上のように,全損として時価額での賠償となった場合には,時価額で争いになり,満足のいく賠償が受けられないケースもあります。

 

ご自身が契約されている自動車保険に車両保険の付帯がある場合には,車両保険を使うことも選択肢になります。

 

上記で述べた時価額の判断は,相手の対物保険を使う場合など相手方に賠償請求する場合が前提です。

 

これと異なり,車両保険の場合は,保険契約に従って,保険金が支払われることになります。

 

そのため,時価額の判断で納得がいかない場合には,車両保険を使うとどうなるかについて,自分の保険会社の担当者に問い合わせてみるとよいかもしれません。

 

車両保険については,使用により,等級ダウンなどの不利益がある場合もあるので,その点も踏まえて,判断することをお勧めします。