第三者の過失により賠償額が減額される場合①

愛知県在住の弁護士の山田です。

 

今回は,民事における過失について,説明いたします。

 

例えば,法律相談で以下のようなケースの相談を受けることがあります。

 

前置きになりますが,この回答は長くなってしまいます。

 

そこで,今回は,前提として民事上の過失について一般的な説明をし,ケースについての回答は次回に譲ります。

 

1 相談されたケース

 

妻Aは,夫Bが運転する車の助手席に乗っていた。

 

夫Bの車が,信号機のない交差点にさしかかったとき,夫Bは左右の安全確認をしないまま,交差点を直進走行した。

 

すると,夫Bからみて右側の横断道路からC車両が猛スピードで交差点に進入してきたため,夫Bの車とCの車が出会い頭で衝突した。Cは当時居眠り運転をしていた。

 

この事故のために,妻Aは,全身を強く打って大怪我をしてしまった。

 

警察の話では,Bも注意散漫であった点で事故について落ち度があるが,事故当時居眠り運転をしていたCの落ち度が圧倒的に大きいとのことであった。

 

2 質問

 

この場合,大怪我をした妻Aは,Cに対して,治療費や慰謝料の全額の損害賠償の請求ができるでしょうか。

 

仮に,運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときはどうでしょうか。

 

3 そもそも民事での過失や過失相殺ってなに?

 

「過失」を平たく言うと,事故という結果が発生する可能性があることをあらかじめ予想できたのに,適切な回避行動を取らなかったことについての落ち度をいいます。

 

要するに,交通事故が発生したことについて,一方当事者にも何らかの落ち度があることを「過失」というというイメージでよいかと思います。

 

交通事故について,民事上の損害賠償請求をする際,過失は「過失割合」という用語で出てくることが一般的です。

 

加害者に対して,民事上,損害賠償請求をする場合,加害者に請求できる賠償金は,「総損害×相手方過失割合」となります。

 

例えば,過失割合が被害者:加害者=10:90で,被害者の総損害(治療費や慰謝料など)が100万円の場合,相手方に請求できる賠償金は100万円×90%=90万円となります。これを過失相殺といいます。

 

過失相殺を簡単に説明すると,事故で怪我を負ったために損害が発生したが,事故について被害者にも落ち度がある場合には,被害者の損害は加害者と被害者自身双方の落ち度があって発生したものだから,加害者が全額損害を賠償するというのはアンフェアだよねという理屈です。

 

4 相談されたケースについて

 

事故の被害にあった人自身に事故に落ち度がない場合には,その人自身には過失がなく,加害者に対して,損害の全額を請求できることになるのが原則です。

 

そうすると,相談されたケースの妻Bについては,運転者夫Aに落ち度があったとしても,妻B自身に過失がない以上,加害者Cに損害の全額を賠償請求できることになるという結論に一見なりそうです。

 

がしかし,実は,そうではありません。

 妻Bが加害者Cに対して損害賠償請求をする場合に,夫Aの落ち度についても妻Bの過失と同視して,過失相殺がされる可能性があるのです。

 

この先は,次回に譲ります。