第三者の過失により賠償額が減額される場合②

弁護士の山田です。

 

前回同様,第三者の過失により賠償額が減額される場合について,説明します。

 

前回は,民事上の過失について一般的な説明をしました。

 

今回は,実際の相談されたケースについての回答をいたします。

 

1 相談されたケース

 

妻Aは,夫Bが運転する車の助手席に乗っていた。

 

夫Bの車が,信号機のない交差点にさしかかったとき,夫Bは左右の安全確認をしないまま,交差点を直進走行した。

 

すると,夫Bの右側の横断道路からC車両が猛スピードで交差点に進入してきたため,夫Bの車とCの車が出会い頭で衝突した。Cは当時居眠り運転をしていた。

 

この事故のために,妻Aは,全身を強く打って大怪我をしてしまった。

警察の話では,Bも注意散漫であった点で事故について落ち度があるが,事故当時居眠り運転をしていたCの落ち度が圧倒的に大きいとのことであった。

 

2 質問

 

この場合,大怪我をした妻Aは,Cに対して,治療費や慰謝料の全額の損害賠償の請求ができるでしょうか。

 

仮に,運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときはどうでしょうか。

 

3 相談されたケースについて

 

結論からいえば,妻Aが加害者Cに対して損害賠償請求をする場合に,夫Bの落ち度についても妻Aの過失と同視して,過失相殺がされる可能性があります。

 

すなわち,夫Bに過失が20%ある場合,妻Aは,加害者Cに対して,総損害の100%を請求できるわけではなく,総損害の80%を請求できることにとどまります。

 

ちなみに,この場合,Cに請求できない損害の20%は,夫Bに請求しろという結論になってしまいます。。。。

 

他方で,Aが同乗する車を運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときは,妻Aは,加害者Cに対して,総損害の100%を請求できます。

 

この結論の違いは,妻Aと運転していた人との関係性の相違により,生じるものです。

 

4 被害者本人と身分上・生活関係上一体の者の過失は過失相殺の対象となる

 

このようなケースについて,最判昭和51年3月25日最高裁判所民事判例集30巻2号160頁は,以下のように判旨しています。

 

被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなす関係にある者の過失(被害者側の過失)をも包含するものと解される。

 

したがって、夫Bが妻Aを同乗させて運転する自動車と第三者Cが運転する自動車とが、第三者Cと夫Bとの双方の過失の競合により衝突したため、傷害を負った妻Aが第三者Cに対して損害賠償を請求する場合,ABの婚姻関係が既に破綻しているなど事情がない限り、夫Aの過失を被害者側の過失として斟酌することができる。

 

この裁判例からすると,被害者本人と身分上・生活関係上一体の者の過失は,過失相殺の対象となり,被害者本人に過失がある場合と同様の扱いを受けてしまいます。

 

それでは,「身分上・生活関係上一体の者」とはどのような場合を指すのでしょうか。

 

これは,次回に譲ります。