下請企業の作業員による元請企業への賠償請求

名古屋も暖かくなってきましたが,まだまだコロナウイルスの影響がなくなりませんね。

 

今回は,労災事故についてご説明いたします。

 

建設現場,工事現場あるいは工場内作業では,下請企業の作業員や派遣会社から派遣されてきた作業員が作業するケースも少なくありません。

 

元請企業の作業現場で作業に従事していた下請企業の作業員が,怪我を負うケースも散見されるところです。

 

下請企業の作業員が,元請企業の作業現場で作業をしている場合において,怪我を負ったときには,元請企業に対して,怪我を負ったことについて損害賠償請求ができるのでしょうか。

 

1 賠償請求の法的根拠

 

従業員が作業中に怪我をした場合において,勤務先企業に賠償請求をするときには,安全配慮義務違反を根拠に賠償請求することが考えられます。

 

賠償請求の法的根拠は,その他にも,使用者責任や工作物責任などもあります。このブログを参照してください。

 

安全配慮義務とは,使用者が,労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう,必要な配慮をする義務をいい,判例によって認めれた後,労働契約法5条によって使用者の義務として明文化されています。

 

下請企業の作業員が,元請企業に対して,損害賠償請求をするときにも,元請企業に対して安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求をすることが多いです。

 

2 元請企業に対して安全配慮義務違反を問えるか

 

元請企業に対する損害賠償請求が認められるためには,安全配慮義務違反を基礎づける法令・通達等の違反の事実が必要です。

 

しかしながら,上記義務違反のみで直ちに損害賠償請求が認められるわけではありません。

 

元請企業と下請企業の作業員との間には,労働契約を締結していないため,契約上の規律はなく,元請企業は下請企業の作業員に対して安全配慮義務を負わないのではないかと考えられる余地があるからです。

 

すなわち,下請企業の作業員を直接的に指揮・命令するのは,下請企業になります。

 

そのため,下請企業の作業員に対して安全配慮義務を負う使用者は,元請企業ではなく,下請企業のみではないかという問題点があります。

 

3 最高裁判所の判例

 

最判平成3年4月11日労判590号14頁では,元請企業の造船所においてハンマー打ちの作業に従事していた下請企業の労働者が,職場の騒音によって聴力障害に罹ったとして,元請企業に対して安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をした事案において,以下のポイントを指摘して,元請企業に対して安全配慮義務違反を認めました。

 

すなわち,①下請労働者が元請企業の管理する設備・器具等を使用し,②元請企業の指揮監督を受けて稼働し,③作業内容も元請企業の労働者とほぼ同じであったこと等のポイントです。

 

上記判例は事例判例でありますが,直接の契約関係にない元請企業が下請企業の作業員に対して安全配慮義務を負うことを前提とした事案で意義のある裁判例です。

 

下請企業の作業員の立場としては,上記ポイントを参照しつつ,安全配慮義務違反を問えるかを検討していくことになりますが,上記ポイントを満たさない場合でも,元請企業に対して損害賠償請求をできる場合も少なくありません。

 

労災によって怪我をした場合,その後遺障害によって一生が左右される可能性もあります。

 

そのため,適切な賠償請求をすることが必要不可欠です。

 

労災事故については,経験やノウハウが要求されるので,労災に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。