第三者の過失により賠償額が減額される場合③

名古屋の山田です。

 

前回同様,第三者の過失により賠償額が減額される場合について,説明します。

 

今回は,「身分上・生活関係上一体をなす者」の過失については,被害者本人に過失があるのと同様に,過失相殺の対象とされることについて説明いたしました。

 

それでは,「身分上・生活関係上一体をなす者」とは,具体的にどのような場合を指すのでしょうか。

 

1 「身分上・生活関係上一体をなす者」とは

 

裁判例や学説の多数では,「身分上・生活関係上一体をなす者」について,被害者本人と生計を同一にしている者をいうとされています。

 

わかりやすくいうと,身分関係から家計が同じ関係といえるし,現実の生活でも家計が同じ関係にある者の過失については,被害者本人の過失と同様の扱いをしますよという理解です。

 

それでは,なぜ,このような取り扱いが認められているのでしょうか。

 

このような取り扱いは,ABC間の賠償請求を一挙に解決するためです。

 

このような取り扱いがないと,示談の解決が面倒になってしまうというのが判例の発想です。

 

このような取り扱いがされない場合の解決方法について,イメージされると理解しやすいと思いますので,以下のケースを想定してください。

 

2 想定ケース

 

例えば,夫Bが運転する車と第三者Cが運転する車が衝突した事故で、Cと夫Bとの双方に過失がある場合(Bの過失20%,Cの過失80%)があるとします。

 

この事故により夫Bの車に同乗する妻Aが怪我をした場合に,妻Aの怪我について法律上野責任を負う人は,事故について落ち度のあるBとCの両方ということになります。

 

3 このケースの示談の流れ

 

①すなわち,妻Aが事故で100万円の損害が発生した場合,妻Aは,法律上,Cに対して,合計100万円を請求できます。

 

次に,②妻Aからの請求に応じて100万円を支払ったCは,Bに対して,払いすぎた賠償金の一部を請求できます。

 

これは,妻Aの損害100万円は,BとCの過失割合に応じて負担しましょうねという法理です。

 

例えば,CがAに対して100万円を支払った場合には,Cは,20%の過失割合があるBに対して100万円×20%を請求できます。

 

以上のように,①Cが,Aに100万円を支払った後,②Aに賠償したCがBに対して,賠償の負担を求めるという2段階の手続きになります。

 

しかしながら,BとAが夫婦であり,財布が共通であるならば,最初からCがAに80万円払えばそれですむのではないかというのが判例の発想です。

 

以上から,裁判例や学説の多数では,「身分上・生活関係上一体をなす者」について,被害者本人と生計を同一にしている者をいうとされています。

 

第三者の過失により賠償額が減額される場合②

弁護士の山田です。

 

前回同様,第三者の過失により賠償額が減額される場合について,説明します。

 

前回は,民事上の過失について一般的な説明をしました。

 

今回は,実際の相談されたケースについての回答をいたします。

 

1 相談されたケース

 

妻Aは,夫Bが運転する車の助手席に乗っていた。

 

夫Bの車が,信号機のない交差点にさしかかったとき,夫Bは左右の安全確認をしないまま,交差点を直進走行した。

 

すると,夫Bの右側の横断道路からC車両が猛スピードで交差点に進入してきたため,夫Bの車とCの車が出会い頭で衝突した。Cは当時居眠り運転をしていた。

 

この事故のために,妻Aは,全身を強く打って大怪我をしてしまった。

警察の話では,Bも注意散漫であった点で事故について落ち度があるが,事故当時居眠り運転をしていたCの落ち度が圧倒的に大きいとのことであった。

 

2 質問

 

この場合,大怪我をした妻Aは,Cに対して,治療費や慰謝料の全額の損害賠償の請求ができるでしょうか。

 

仮に,運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときはどうでしょうか。

 

3 相談されたケースについて

 

結論からいえば,妻Aが加害者Cに対して損害賠償請求をする場合に,夫Bの落ち度についても妻Aの過失と同視して,過失相殺がされる可能性があります。

 

すなわち,夫Bに過失が20%ある場合,妻Aは,加害者Cに対して,総損害の100%を請求できるわけではなく,総損害の80%を請求できることにとどまります。

 

ちなみに,この場合,Cに請求できない損害の20%は,夫Bに請求しろという結論になってしまいます。。。。

 

他方で,Aが同乗する車を運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときは,妻Aは,加害者Cに対して,総損害の100%を請求できます。

 

この結論の違いは,妻Aと運転していた人との関係性の相違により,生じるものです。

 

4 被害者本人と身分上・生活関係上一体の者の過失は過失相殺の対象となる

 

このようなケースについて,最判昭和51年3月25日最高裁判所民事判例集30巻2号160頁は,以下のように判旨しています。

 

被害者の過失には、被害者本人と身分上、生活関係上、一体をなす関係にある者の過失(被害者側の過失)をも包含するものと解される。

 

したがって、夫Bが妻Aを同乗させて運転する自動車と第三者Cが運転する自動車とが、第三者Cと夫Bとの双方の過失の競合により衝突したため、傷害を負った妻Aが第三者Cに対して損害賠償を請求する場合,ABの婚姻関係が既に破綻しているなど事情がない限り、夫Aの過失を被害者側の過失として斟酌することができる。

 

この裁判例からすると,被害者本人と身分上・生活関係上一体の者の過失は,過失相殺の対象となり,被害者本人に過失がある場合と同様の扱いを受けてしまいます。

 

それでは,「身分上・生活関係上一体の者」とはどのような場合を指すのでしょうか。

 

これは,次回に譲ります。

第三者の過失により賠償額が減額される場合①

愛知県在住の弁護士の山田です。

 

今回は,民事における過失について,説明いたします。

 

例えば,法律相談で以下のようなケースの相談を受けることがあります。

 

前置きになりますが,この回答は長くなってしまいます。

 

そこで,今回は,前提として民事上の過失について一般的な説明をし,ケースについての回答は次回に譲ります。

 

1 相談されたケース

 

妻Aは,夫Bが運転する車の助手席に乗っていた。

 

夫Bの車が,信号機のない交差点にさしかかったとき,夫Bは左右の安全確認をしないまま,交差点を直進走行した。

 

すると,夫Bからみて右側の横断道路からC車両が猛スピードで交差点に進入してきたため,夫Bの車とCの車が出会い頭で衝突した。Cは当時居眠り運転をしていた。

 

この事故のために,妻Aは,全身を強く打って大怪我をしてしまった。

 

警察の話では,Bも注意散漫であった点で事故について落ち度があるが,事故当時居眠り運転をしていたCの落ち度が圧倒的に大きいとのことであった。

 

2 質問

 

この場合,大怪我をした妻Aは,Cに対して,治療費や慰謝料の全額の損害賠償の請求ができるでしょうか。

 

仮に,運転していたのが,夫Bではなく,妻Aの友人Dであったときはどうでしょうか。

 

3 そもそも民事での過失や過失相殺ってなに?

 

「過失」を平たく言うと,事故という結果が発生する可能性があることをあらかじめ予想できたのに,適切な回避行動を取らなかったことについての落ち度をいいます。

 

要するに,交通事故が発生したことについて,一方当事者にも何らかの落ち度があることを「過失」というというイメージでよいかと思います。

 

交通事故について,民事上の損害賠償請求をする際,過失は「過失割合」という用語で出てくることが一般的です。

 

加害者に対して,民事上,損害賠償請求をする場合,加害者に請求できる賠償金は,「総損害×相手方過失割合」となります。

 

例えば,過失割合が被害者:加害者=10:90で,被害者の総損害(治療費や慰謝料など)が100万円の場合,相手方に請求できる賠償金は100万円×90%=90万円となります。これを過失相殺といいます。

 

過失相殺を簡単に説明すると,事故で怪我を負ったために損害が発生したが,事故について被害者にも落ち度がある場合には,被害者の損害は加害者と被害者自身双方の落ち度があって発生したものだから,加害者が全額損害を賠償するというのはアンフェアだよねという理屈です。

 

4 相談されたケースについて

 

事故の被害にあった人自身に事故に落ち度がない場合には,その人自身には過失がなく,加害者に対して,損害の全額を請求できることになるのが原則です。

 

そうすると,相談されたケースの妻Bについては,運転者夫Aに落ち度があったとしても,妻B自身に過失がない以上,加害者Cに損害の全額を賠償請求できることになるという結論に一見なりそうです。

 

がしかし,実は,そうではありません。

 妻Bが加害者Cに対して損害賠償請求をする場合に,夫Aの落ち度についても妻Bの過失と同視して,過失相殺がされる可能性があるのです。

 

この先は,次回に譲ります。

別居中の夫婦間における子供の監護者と子の連れ去りの対応

弁護士の山田です。

 

今日は近年増加している夫婦関係の問題について説明いたします。

 

1 別居中の夫婦間で問題となる子供の監護のケース

 

離婚は成立していないが、離婚を前提にして別居がされた場合に婚姻関係が続いている場合があります。

 

この夫婦間に未成年の子供がいる場合、主に子供を監護する親をどちらにするか決める必要が出てくることがあります。

 

そこで、今回は、①別居中の夫婦間における子供の監護者の決定方法、②離婚していないが別居中の夫婦間において一方の親が子供を連れ去った場合の対応方法について、ご説明いたします。

 

2 別居中の夫婦間における親権者・監護権者

 

子供の監護については、監護教育権(民法820条)として、親権の一内容として位置づけられます。

 

未成年の子については父母の親権に服するので、原則として、父母の婚姻中、親権は父母が共同して行使することになります(民法818条1号)。

そのため、別居の夫婦の場合でも、婚姻関係が継続している場合には、子供に対する監護権については父母が共同して行使することになります。

 

3 別居中の夫婦間での監護者の決定をする場合がある

 

しかしながら、別居の場合の事実上の子どもに対する監護者の取り決めをする必要がある場合も少なくありません。

 

夫婦間で監護者の取り決めの合意がまとまる場合には、その合意に基づいて監護者を取り決めることで足ります。

 

しかしながら、監護者の合意がまとまらない場合には、監護者の指定を求める審判(家事39条・別表2第3項)により、監護者を定めることになります。

 

4 別居中の夫婦での子供の連れ去り

 

すでに述べたとおり、別居の夫婦の場合でも、婚姻関係が継続している場合には、子供に対する監護権については父母が共同して行使することになります。

 

それでは、別居中の夫婦間において、一方の親が、他方の親の下にいる子供を勝手に連れ去ってしまった場合、連れ去った親に対して子供の引き渡しを求めることはできないのでしょうか。

 

結論から言えば、法的手続きにより、子の監護権者の指定及び子の引き渡しを求めることができます。

 

5 子の監護権者の指定及び子の引き渡しを求める法的手続き

 

子の監護権者の指定及び子の引き渡しは、「子の監護に関する処分」にあたり、審判事項とされますので(家事39条・別表第3項)、調停又は審判を申し立てることになります。

 

また、子の引き渡しを求める手続きをとる場合、それが緊急を要する場合も少なくありません。

 

そこで、このような場合には、調停又は審判の確定前に、「婚姻等に関する審判事件を本案とする保全処分」として、子の引き渡しの仮処分を申し立てることも可能です。