交通事故の損害賠償請求の仮払仮処分

交通事故の事件を多く扱っていると、一般の弁護士が行わない手続きを扱うことがあります。

 

例えば、交通事故の損害賠償請求の仮払仮処分手続などがその代表例です。

 

仮払仮処分とは、民事保全手続の1つで、交通事故の被害者が、稼働能力を喪失して生活に困窮したり、多額の療養費を要する場合に、加害者や自賠責法3条の運行供用者に対して金員を被害者に支払うように求める処分で、裁判所に申立てをする仮処分手続きです。

 

仮払仮処分は、被害者が申し立てた事情及び加害者側の審尋を踏まえて、裁判所が命令の可否を判断します。

 

交通事故の損害賠償請求の仮払仮処分手続の特徴は、主に以下のとおりです。

 

1点目は、被害者に求められている損害賠償請求権の疎明の程度が高度であるという点です。

 

仮払仮処分は、民事保全手続で求められることが多い、いわゆる担保金の積み立てが求められないことが通例です。

 

そのため、その均衡から、被保全債権である損害賠償請求権の疎明の程度が高く要求されています。

 

2点目は、損害賠償請求権を有するのみでは足らず、仮払仮処分が行われないと生活に困窮を来すといえる状況を疎明する必要がある点です。

 

すなわち、生活の困窮の程度が著しく、自賠責保険への被害者請求(16条請求)等の保険金の受給のみでは当座の生活や療養費用がまかなえないといった事情を疎明することが求められます。

 

このいわゆる保全の必要性については、被害者の配偶者や親族の資産が十分である場合には被害者に不利な事情として斟酌されうる見解が示されているなど、厳格に判断されています。

 

以上の特徴から、交通事故の損害賠償金の仮払仮処分手続は、あまり利用されることのない手続きともいえます。

 

私自身、仮払仮処分手続が認められるケースはかなり限られたケースであるように感じており、利用した件数もわずかです。