インターネットなどで情報収集が容易な昨今,周りの人から,弁護士に相談する意味や依頼する意味はあるのかと聞かれることがあります。
確かに,知識を提供するという点では,弁護士に相談しなくともインターネットなどで調査できるという面はあると思います。
しかし,それでもなお,私個人としては,弁護士に相談するメリットがあるのではないかと考えています(もちろん私が弁護士だからということもありますが,決して営業トークではないです)。
例えば,私が多く扱う交通事故や労災事故についても,文献や判例雑誌はたくさんあります。また,インターネットにもたくさん知識があふれています。
けれども,知識を知っているだけでは実務では役に立ちません。
知識や情報をどのように理解し,個々の事案においてどのように使うかを判断する必要に迫られます。
知識や情報はあくまで一般論のものですから,インターネットや雑誌だけでは,目の前にあるケースにおいてその知識や情報がどのような意味をもつのかという答えはかえってきません。
そのため,各人で, 知識や情報をどのように理解し,個々の事案においてどのように使うかを判断する必要があります。
弁護士に依頼する意味の重要な1つは,まさに,この判断をすることにあると感じています。
さらにいえば,1つの事案でも,弁護士が事案の解決のための見通しやポイントなどを説明する場合に,弁護士によって説明の仕方や重点に違いが生じてくることも少なくないように思います。
例えば,法律問題に悩む人に,事件の見とおしを説明する場合,専門的な知識や法律をそのまま伝えても意味がありません。その方の事情に即して,法律問題のポイントを具体的に説明する必要がありますが、1つの事案について,弁護士によって特に大事だと思っているポイントが違うこともあります。
その場合には,弁護士の考え方の違いから,説明の重点の置き方に違いが生じてきます。
これは,一般的な知識を前提に,個々の弁護士が,その事案について,どのような見とおしをもっているか,どのような見立てをしているかの違いといってもいいと思います。
一般的な知識は同じでも,弁護士によって,見立ての仕方が変わってくることは珍しくありません。
特に違う法律事務所の弁護士との相談の比較において顕著に感じます。
そう考えると,個々の事案を解決するためには,インターネットでの知識だけでは不十分であり,弁護士に相談する意味・依頼する意味があると思います。
私自身,愛知県,岐阜県,三重県,福井県などの地域で,これまで数多くの依頼者の方にご依頼をいただいておりましたが,依頼者の方に上手く説明できたこともあれば,依頼者の方にモヤモヤさせてしまったこともあります。
依頼者の方に上手く説明できなかったときには,その日一日,悩むことも少なくありません。