法律や条文はわかりづらい?

法律や条例の文章や文言はわかりづらい、難しいと思われる方は少なくないのではないでしょうか。

法律や条例などの法令はわかりやすくいえばルールブックです。

ルールブックは柔軟な対応ができるように、その規定内容はわざと抽象的・包括的な文章・文言につくられています。

なぜかといえば、ルールの規定内容を一義的な文章・文言にすると、ルールの規定に完全に合致するケースについてはルール違反と認めることができるものの、一部でも当てはまらないケースについては、仮にルール違反として処理するべきケースであっても、ルール違反とはいえないことになります。これはルールの抜け穴を大きく許容するという帰結になります。

一例をあげると、窃盗罪を定める刑法235条は「他人の財物を窃取した者は窃盗の罪」とするという文言になっています。

しかし、窃取罪を規定する文言を「他人の財物を自分の所有物にした者は窃盗の罪とする」とした場合、自分の所有物にするつもりはないが所有者に無断で長期間借りるつもりで財物を奪ったという場合には窃盗罪にあたらないことになり、窃盗罪として処罰するべきケースでも窃盗罪にあたらないという抜け穴を認めてしまいます。

そのため、法律や条例などの規定内容は、柔軟な運用ができるようにわざと抽象的・包括的な文章・文言につくられているため、わかりづらいのです。

弁護士、裁判官や検察官などの法律家は、抽象的・包括的な文章・文言になっている法令をその制定趣旨に即して運用することが求められており、それが職務内容とも言えます。

代車

交通事故で車両が損傷して、その修理や買い替えのために車両を使用できなくなった場合、代車を借りることがあります。

代車代を支払ってもらえる期間は、「修理可能な場合には修理に必要な相当期間、買替が必要な場合には買替に必要な相当な期間」と考えられています。

すなわち、実際に修理や買替が終わるまでの間のレンタカー代を支払ってもらえるわけではありません。

故障した車を修理する場合、修理の箇所や方法などにもよりますが、代車代が支払われる期間は、およそ1週間から2週間程度が目安と言われています。

故障した車を買い替えることになった場合、代車代が支払われる期間は、2週間から1か月が目安と考えられています。

代車代が支払われる期間は限られており、「相当な期間」を過ぎてなお、代車を使用する場合には、自己負担になる可能性があります。

代車は、日常生活や仕事に直結する車の使用にかかわるものであり、代車費用が多額になることも少なくありません。 そのため、加害者が費用を負担する利用期間などについて、事前に加害者側と交渉をしておかないと、後から、多額の代車代を自己負担する危険性もあり、注意が必要です。

名古屋を含む愛知県在住の方で交通事故の代車にお悩みの方は弁護士法人心にご相談ください。

過去の法令の調査

事件を扱う中で、現在は廃止されている法令や改正される前の法律を調査することがあります。

現在適用されている法律を探すのは簡単ですが、過去の法律を探すのは意外に大変です。

廃止された法律については、廃止された時点の法律を調査する検索システムもありますので、比較的調査は容易です。

しかし、法律によっては繰り返し改正を重ねているため、ある時点で適用される法令を特定するのは大変です。

改正前の法律を調べる一番の方法は、調査対象時点の年代の法令全書を調査することですが、国会図書館や県立図書館で探す必要があるなど、時間と手間がかかります。

また、そもそも、法令が改正されている事実自体を発見するのが大変な場合もあります。また、改正の経緯や内容を簡単に把握するシステムがあるわけでもありません。

ビックデータが発展し、情報アクセスが容易な時代とはいっても、アナログで地道な調査が必要なこともあるのだなぁと実感しています。

改正前の法令を調査する必要があるのは、概ね、法曹三者や行政官に限られ、一般の人が調査する者ではないと思いますので、こういった情報をデータ化する業者もいないと思います。

しかし、私が弁護士を引退するまでには、こういった情報もデータ化されていてほしいと切に願います。

疑問の解決

弁護士の仕事をしていると、ある時、ふっと長年感じていた疑問が解消されることがあります。

例えば、交通事故の民事訴訟の審理を検討するなかで、ふっと学生時代に勉強した刑事訴訟法に関する判例の背景や思想理念を深い意味で理解できるようになることがあります。

もちろん、学生時代の勉強でも、判例の事案、争点、争点に関する結論やその理由など、判例を使いこなせる程度の理解は可能です。

しかし、その判例の適用範囲を深く正確に理解するためには判決文に明示されていない判例の背景や思想理念を理解する必要があり、学生時代の勉強のみでは深く理解するところまでに至らないことも少なくありません。

その判例の背景や思想理念を理解するためには、学生自体に勉強する法理論からの分析検討のみでは不十分で、現場の実務感覚も求められているためということが理由の1つだと思います。

もう1つの理由には、その判例を作った裁判官が抱いたであろう悩みや思考過程を、実務家である自分自身もその分野や別の分野を通じて経験するになるからということも大きいのではないかと思います。

刑事事件でも民事事件でもひいては行政事件でも、法律実務家として事件に取り組んでいると、必ず疑問を持つことがあります。

それは、いま扱っている事件の内容と既存の判例の事案が違うためにその判例にしたがった解決に納得ができないと感じることや、既存の判例にしたがって導き出される法的な結論それ自体には納得できるけれども、いま扱っている当事者にとっては酷な結論ではないかといった悩みです。

判例を初めとする法律実務は、学者ではなく、裁判官、検察官や弁護士といった実務家によってリードされている面は少なくありませんので、法律実務をより良いものにしていくためにも、こういった悩みは大事にしていきたいと思っています。

業界研究

法的紛争が発生する場合、紛争の原因となる法的争点のパターンは、概して2つに分類できます。

1つ目のパターンは、法律の解釈運用は明確であるものの、その前提となる事実関係に争いがあるため、法的紛争が生じているパターンです。

例えば、お金を貸すつもりで渡したところ、相手方が借りたのではなく贈与を受けたお金であると主張して、法的紛争が生じているケースを想定してみてください。

この例の場合、法律上、貸したお金を返済する義務があるという解釈運用は明確ですので、争いのポイントは事実関係(貸したのか贈与したのか)になります。

この1つ目のパターンは、事実関係を明らかにすることができれば法的紛争について結論を出すことができますので、弁護士としては、事実関係と証拠の有無を整理するというシンプルな作業をすることになります。

2つ目のパターンは、法律の規定がないあるいは法律の解釈運用があいまいなために、法的紛争が生じているパターンです。

例えば、最近その業界で生み出された業務や取引形態であるために、その業界や取引形態が生み出される前に制定された法律には明確なルールが設けられていない結果、法的紛争が生じるパターンです。

このような法的紛争に取り組む場合、その新しく生み出された業務や取引形態の内容や実態を調査することから始める必要があります。

しかし、取引形態の内容や実態といっても、業界の慣習やローカルルールなど暗黙の了解に基づいて成り立っているものも一定程度存在するため、調査が難航することも珍しくありません。

そのような場合には、関係団体や公的機関に問い合わせをしたりするなど、大変な作業が伴います。

愛知県には名古屋市を中心に専門書籍を扱う図書館や書店があるので、毎日のように足を運ぶことも珍しくありません。

法律改正や最新裁判例

弁護士業務において、裁判例の動向を把握することは欠かせません。

学生の頃は、体系的に裁判例を学ぶ機会が多く、裁判例の動向について習熟しています。

しかし、弁護士になると、事件処理に必要な範囲で裁判例を確認することが多くなります。

そのため、普段扱わない分野については、法律の改正や最新裁判例を体系的に把握する機会が少なくなってしまいます。

私と全く違う業務を扱う弁護士と話していると、私が知らない法律改正や最新裁判例の内容をはじめて知ることも少なくありません。

特に法律改正や最新裁判例の内容に直接関係する業務を扱う弁護士からの話は、実務の動向を踏まえた知見であることが多く、聞いていて大変面白いですし、勉強になります。

また、弁護士会でも法律改正や最新裁判例の研修も行っていますので、大変参考になります。

学生の頃は学者や法律実務家の書籍を読んで勉強することが多かったのですが、現在は、書籍に加えて実務家から直接話を聞くことで勉強することも多く、いいバランスだと思います。

最近全く扱っていない分野については、浦島太郎状態になっているという危機感もあるので、これからも勉強していなければと思います。

刑事事件を扱うドラマ

ドラマや映画には、いわゆる法廷ものと呼ばれる刑事事件を扱う映画があります。

テレビ以外のコンテンツも充実しているため、今では、最近の映画やドラマだけではなく、往年の作品も気軽に視ることができます。

私は学生の頃から映画が大好きでしたが、映画やドラマで扱う法廷ものは、多くがミステリーものであることが多いため、あまり興味がないジャンルでした。

しかし、このコロナ過で家族と家で映画を観ることが多くなり、法廷ものも観るようになって、法廷ものというジャンルへの印象が変わりました。

海外の映画では、いわゆる犯人の動機や真犯人を解明するミステリーを扱う作品以外にも、社会的な議論のある事項について法廷で議論を闘わせる作品もあります。

また一見犯人の動機を解明していくミステリー作品のようでいて、実は、社会的議論のある事項について問題提起をすることを主眼とすると思われる作品もあります。

色々な作品を観ていく中で、いわゆる法廷ものと呼ばれる作品の面白さに気付いていくこの頃です。

弁護士という職務に関連していえば、特に海外の作品は、刑事事件手続を正確に反映した作品になっていることが多く、また、刑事事件手続の手続違反が物語のミソになっている作品もありますので、とても興味深いです。

刑事事件に関する法律や手続は、その国の考え方などバックグラウンドによって、様々な違いが生じ、そのような背景にふと気付くことも面白さの1つです。

私が好きな作家の小説にも、愛知県を舞台としたミステリー小説がありますので、これも映画化してくれるとよいなと思っています。

証拠保全

医療事故の事案では、医療機関で保管されている資料を収集する必要が出てくるケースが珍しくありません。

資料を収集する方法としては、まずは、医療機関に対して、任意の資料の開示を求める方法があります。医療機関が開示に応じるのであれば資料の収集が可能となります。

しかし、資料が改ざんされてしまう場合、あるいは、保管期限経過により廃棄される可能性がある場合には、任意の開示請求によって資料を収集できないことがあります。

このような場合に備えて、民事訴訟法234条は、訴え提起前・訴え提起後のいずれの場合でも、裁判所への証拠保全手続を設けています。

この証拠保全手続は、医療過誤事件での医療カルテの改ざん防止のために利用されることが多いですが、その他の事件でも利用されることがあります。

この証拠保全は、裁判所に捜索・差押権限があるわけではないため、あくまで医療機関等の保全対象物の所持者管理者による任意の協力が想定されている手続きです。

そのような背景もあり、裁判所の証拠保全手続は、条文に規定されていない実務の運用・慣行に従って行われている印象を受けます。

そのため、裁判所の証拠保全手続を利用する場合には、事前に、裁判所の運用・慣行を踏まえた対応方法を検討する必要があり、場合によっては弁護士から裁判所と運用についての交渉を行う必要がある場合もあるため、注意が必要です。

法令調査

弁護士の業務において、法令調査は必要不可欠です。

法令調査は、現在の法律の規定・解釈内容に関する調査が一般的です。

しかし、時には、現在は廃止された法律、あるいは、改正前の法律の規定を調査することがあります。

廃止された法律・改正前の法律に関する文献や資料は、絶版になっていたり、廃棄されてしまっているものもあります。

そのため、廃止された法律や改正前の法律の調査には時間がかかってしまいます。

廃止された法律や改正前の法律を調査する場合、私は、弁護士会館の図書館を利用します。

弁護士会館の図書館には、絶版となった書籍も処分されずに閉架書庫においてあることが多く、必要な情報にアクセスしやすいです。

また、弁護士会館の図書館は、多くの弁護士が参照する質の高い書籍が用意されており、また論文や裁判例集なども蔵書されているため、深堀した調査や横断的な調査などが可能です。

また、専門書籍を豊富に扱う大学の図書館を利用できる場合には、大学の図書館を利用することもあります。

アマゾンなどネットで書籍を買う時代で、大型書店の数も減ってきている今日ですが、弁護士の職務においてはネットで書籍を探したりするだけでは不十分に感じています。

代車料について

交通事故で車両が損傷して、その修理や買い替えのために車両を使用できなくなった場合、代車を借りることがあります。

今回は、その代車費用を加害者に請求できる期間について、ご説明いたします。

1 加害者に費用を請求できる代車利用期間は限られている   

代車代を支払ってもらえる期間は,「修理可能な場合には修理に必要な相当期間,買替が必要な場合には買替に必要な相当な期間」と考えられています。

すなわち,実際に修理や買替が終わるまでの間のレンタカー代を支払ってもらえるわけではありません。

2 車を修理する場合の代車利用期間

故障した車を修理する場合、修理の箇所や方法などにもよりますが、代車代が支払われる期間はおよそ1週間から2週間程度が目安と言われています。

3 買い替え・全損扱いの代車利用期間

故障した車を買い替える場合、代車代が支払われる期間は2週間から1か月が目安と考えられています。

4 代車の利用には注意が必要です

代車代が支払われる期間は限られており、「相当な期間」を過ぎてなお、代車を使用する場合には、自己負担になる可能性があります。

代車は、日常生活や仕事に直結する車の使用にかかわるものであり、代車費用が多額になることも少なくありません。

そのため、加害者が費用を負担する利用期間などについて、事前に加害者側と交渉をしておかないと、後から、多額の代車代を自己負担する危険性もあり、注意が必要です。

代車については詳しくは弁護士にご相談ください。 

年末年始の過ごし方

私にとって、ここ数年の年始年始は、普段の事件から離れて、自分の課題に取り組む貴重な機会になっています。

去年の年末年始は、心と体を休めて、事件処理に対する自分の課題について俯瞰して見直すことができました。

当時、私は、依頼者の方に事件処理の方針を説明する際、事件が解決するまでの全体的な道筋を丁寧に説明する傾向がありました。

そのような説明の仕方それ自体が間違っているわけではないのですが、事件の内容や依頼者様の事情によっては、全体的な道筋を説明するのではなく、直近で問題になっている事情のみを説明するという方法がより適切なケースもあるように感じていました。

そこで、去年の年末年始は、それまでの事件処理を振り返り、依頼者の方へ事件処理の方針を説明する方法を改めて見直す時間を設けました。

普段の業務は、一つ一つの事件処理に集中するため、事件処理の傾向など事件処理に対する自分の姿勢を見直すことはあまりできませんので、とても有意義な時間になりました。

今年の年末年始は、自分の弱点になっている法律分野の知識を抑えることと、法律分野以外で興味のある本を読む時間にしたいと思っています。

普段の業務時に、法律分野のみに取り組んでいる時間が長くなると、視野が狭くなり、多角的な見方が衰えているように感じるようになっていたため、可能であれば、年末年始以降も、法律分野以外の何かしらに接する時間を設けたいです。

事件処理方針について

事件処理について方針を立てることは必要不可欠です。

事件処理の方針は、弁護士から依頼者に対して方針を提案し、依頼者の了解を得ることで決定します。

依頼者に対して事件処理の方針を提案する場合には、複数の方針案を提案し、依頼者の方に選んでもらうという方法を取ってもらうことが多いです。

事件処理の方針において何を重視するかは、依頼者によっても様々ですので、その依頼者の意向を踏まえて方針案を提案しています。

事故現場の確認

交通事故の事故状況が争いになるときは、できるだけ、事故現場に行って現地を確認するようにしています。

もちろん、事故現場をドライブレコーダーや写真で見ることも有用ですが、現地に行って初めて気付くことも珍しくありません。

例えば、現地に行って初めて駐車場のスペースが狭いことに気付き、それがきっかけで相手方の主張の矛盾点を見つけたこともあります。

現地に行くことは、時間がかかるという負担もありますが、大事にしていきたいと思っています。

アナログ

デジタル化が進む昨今、電子書籍を利用する方が増えています。

私についていえば、まだ電子書籍を利用したことがないものの、気になっています。

一度、電子書籍を利用しようと思う今日この頃です。

内容証明郵便

法律相談においてしばしば質問を受けるものとして、内容証明郵便があります。


法律家以外の一般の方でも内容証明郵便を利用する例も散見されます。


しかし、なかには、内容証明郵便の機能を正確に理解していないと思われる利用方法もあります。


そこで、今回は内容証明郵便について簡単にご説明いたします。


内容証明郵便とは、1頁に「20字以内×26行以内」で書簡を3部作成し、1部を相手方に送付し、1部を郵便局に保管し、1部を差出人が保管する郵便です。


なお、現在では、電子メールによる作成・送付も可能となっています。


内容証明郵便は、郵便局において当該郵便物の内容である文書の内容を証明する(郵便法48条1項)というものであるため、この名称が付されています。


内容証明郵便を送付する場合には、郵便局において相手方に当該郵便物が配達されたことを証明する配達証明によるのが通常です。


これは、配達証明付き内容証明郵便で文書を送付しておけば、当該文書の内容とそれが相手方に配達された日時とを証明することができます。


そのため、特に、一定の内容の意思表示(相殺・契約解除等)をし、それが相手方に到達したことの証明を残しておきたい場合には、当該意思表示を文書によってし、配達証明付き内容証明郵便で送付しておけば、その証明がおおむね可能となります。


内容証明郵便については、金銭支払の催促など、「特別な郵便」というイメージを踏まえて、相手方に心理的圧迫を加えるという利用方法を用いられることもあります。


ただし、これはあくまでも事実上の効果を意図したもので、またその有効性についてはケースバイケースで、奏功しないケースもあるところです。


私が弁護士になって間もないころにおこなった業務が内容証明郵便の作成でした。


内容証明郵便を発送するため、郵便を大切に鞄にしまい、名古屋駅近くの郵便局まで恐る恐る持って行ったことを今でも思い出すことがあります。

複数の賠償義務者に対する債務の免除の効力

 今日は少し難しい話になるかもしれません。
 

 複数の賠償義務者のうち1人と示談する場合に発生しうる論点についてご説明します。

 

 名古屋・岡崎・豊田など愛知県全域・岐阜・三重県内では、仕事中の運転者による交通事故が少なくないため、このような場合にも理屈上問題となります。

1 複数の賠償義務者の関係

1つの交通事故において、1人の被害者に対して、賠償義務を負う賠償義務者が複数存在する場合があります。


例えば、所有者でない者が運転していた車両によって交通事故が発生した場合、車両の運転者と所有者が被害者に対する賠償義務を負います。

このような事案において、被害者が、複数の賠償義務者のうち1人との間で権利放棄を含む示談をした後、他の賠償義務者に対して追加の損害賠償請求をすることができるのでしょうか。


これは、共同不法行為者の1人に対する債務の一部免除が他の共同不法行為者に対していかなる効力を及ぼすかという問題ととらえることができます。


2 不真正連帯債務について


複数の賠償義務者が存在する場合、賠償義務者は、被害者に対して「不真正連帯債務」を負うと解されています。

「不真正連帯債務」とは、連帯債務と同じく、数人の債務者が同一内容の給付につき各自独立して全部の給付をなすべき債務を負担し、しかもそのうちの1人(又は数人)が一個の全部の給付をすれば総債務者の債務が消滅する多数当事者の債務であって、民法の連帯債務に属しないものであり、不真正連帯債務については、債権を満足させる事由(弁済・代物弁済・相殺・供託)は絶対的効力を生じるが、それ以外の事由は相対的効力を生じるにとどまるというのが、従来の通説判例です。

3 複数の賠償義務者のうち1人に対する権利放棄(債務免除)の効力


共同不法行為者の1人に対する債務の一部免除が他の共同不法行為者に対して効力を及ぼすかについては、①絶対的効力説(連帯債務者の1人に対してした債務の免除は、その連帯債務者の負担部分についてのみ、他の連帯債務者の利益のためにも、その効力を生ずる旨の旧民法437条が適用され、免除をした相手方の負担部分については、他の債務者に対しても請求できないとする見解)、②相対的効力説(免除の効力は他の債務者に一切及ばないとする見解)、③折衷説があります。


4 裁判例の傾向


最高裁判所の裁判例には、不真正連帯債務には連帯債務の絶対的効力に関する旧民法437条は適用されないとして、絶対的効力説を否定する裁判例もあります(最判昭和48年2月16日民集27巻1号99頁、最判平成6年11月24日裁判集民173号431頁)。


ただし、これらの裁判例は、被害者が他の共同不法者の債務をも免除する意思があったと認められる場合にまで、免除に絶対的効力を認める可能性をも否定する趣旨ではないようにも思われます。


実際、その後の最高裁の裁判例には、共同不法行為者の1人と被害者との間で成立した訴訟上の和解における債務免除の効力について、他の共同不法行為者の残債務をも免除する意思を有していると認められるときには、他の共同不法行為者に対しても、残債務の免除の効力が及ぶことが認めています。


5 まとめ


このように、被害者が、複数の賠償義務者のうち1人との間で権利放棄を含む示談をした後、他の賠償義務者に対して追加の損害賠償請求をすることができるのかについては、被害者の意思によることとなります。


したがって、被害者が複数の賠償義務者のうち1人との間で権利放棄を含む示談をする場合には、他の賠償義務者への請求に関する疑義を解消するため、他の賠償義務者に対する請求をする意思があるかどうか、あるいは、他の賠償義務者に対する請求をも放棄する意思であるか、いずれの意思を有するかを明示する必要があります。

法律の改正・運用の変更

近年、時代の変化が早くなっているように感じます。

時代の変化に対応するように、法律の改正も増えています。



例えば、民法などいわゆる基本法の改正も頻繁に行われるようになっています。

特に、民法については、明治時代に制定されて以来、大きな改正はされていませんでしたが、近年、広範囲の分野で頻繁に改正がされています。

これも、時代の変化に対応できるように改正する必要性があるためです。

また、改正前の現行法でも対応できる範囲で、法律実務も新しい試みが始まっています。

例えば、裁判についていえば、裁判所に出頭して期日を行うのが原則だったところが、現在ではオンラインによる期日が原則かのような運用をしている裁判官もいます。

裁判の審理のあり方それ自体についても、これまで以上にスピーディーな審理を実現しようとする試みが始まっています。

例えば、当事者の主張立証が争点のポイントに絞って進んでいくために、裁判所が作成した訴状や準備書面の書式を利用して審理を行うという試みが一部で開始されています。


これは、弁護士によっては饒舌なきらいのあった準備書面を制限し、裁判所が求めるコンパクトな訴状ないし準備書面の提出がされるようにする試みです。

このような審理のあり方は、争点のポイントに絞って審理をするという点で、これまで以上にスピーディーな審理が可能となります。

民事訴訟制度は、長年、裁判の審理の長期化という課題を解決するために審理の迅速化に取り組んできていますが、
今回の運用もその流れに沿ったものです。

愛知県・岐阜県・三重県内の裁判所も徐々に運用が変わりつつあるように感じています。

特に、名古屋地方裁判所本庁の運用はどんどん変わりつつあるように感じていますので、目が離せません。

事案の本質を把握する

近年、弁護士の業務は広がりを見せており、業務内容も多岐にわたります。

 

業務内容が違うと対応方法や分析の視点が180度変わることも珍しくありません。

 

しかし、他方で、どのような業務であろうと、常に必ず求められることも存在します。

 

それは、結論を左右するポイント、言い換えれば、当該事案の本質を把握するということです。

 

例えば、顧問先から法的意見を求められた場合、その事案の本質を把握しないと、回答自体が誤ってしまう可能性があります。

 

また、仮に、結論自体が誤っていないとしても、事案の本質を踏まえた結論過程になっていない以上、顧問先にその結論の正当性を理解してもらうことができません。

 

事案の本質を把握することの重要性を理解していない法律実務家はいないと思います。

 

私も、学生時代から現在まで、恩師・先輩方から、何度も事案の本質を把握する力を養うことの重要性を学んできました。

 

しかし、この「事案の本質」は、事案によって大きく変わってきますので、簡単に把握できるものではありません。

 

例えば、「事案の本質」が法律解釈の問題である事案もあれば、「事案の本質」が関係者の性格である事案もあります。

 

この事案の本質を把握する力として求められるのは、法的知識や経験はもちろんですが、最近は回答を求められる弁護士の「ものの見方」も求められているのではないかと考えるようになっています。

 

そして、この「ものの見方」というのは、人間に対する理解、様々な人生観に対する理解や共感だと考えています。

 

結局のところ、法的トラブルは人と人との間で生じるトラブル(企業間トラブルも突き詰めると人と人とのトラブルに含めることが可能だと思います)ですので、人間に対する理解、様々な人生観に対する理解や共感が備わっていないと、事案の本質を把握することはできないように思うからです。

 

弁護士として求められる素養は奥が深く、法律分野の研鑽だけでは不十分だと感じています。

人事異動の時期

4月に入りました。

 

企業や公官庁では4月に人事異動が行われることも少なくありません。

 

私が担当する事案でも、保険会社の担当者が人事異動で担当変更のご挨拶をいただくことが増えています。

 

また、裁判になっている事案では、審理を担当している裁判官が人事異動によって交替する事案が複数あります。

 

愛知県内で係属している裁判に限って言えば、名古屋地方裁判所本庁・名古屋地方裁判所岡崎支部で審理中の裁判は、裁判官の交替がありました。

 

裁判官の交替は、弁護士としても関心を持つ出来事になります。

 

裁判を審理する裁判官は自らの心証(当事者の主張についての考え)を後任の裁判官に強制することはできません。

 

また、ほとんどの場合、裁判官の心証を後任の裁判官に引継ぐこともないようです。

 

そのため、前任の裁判官がこちらの主張を認める心証を抱いていても、後任の裁判官が全く別の心証を抱くことがあります。

 

すなわち、裁判官の交替によって、裁判の判断や審理の仕方に大きな変更が生じる可能性があるのです。

 

これは、事案について個々の裁判官が自らの良心に基づいて自由に心証をとることができるという憲法上の定めに基づくものです。

 

もっとも、実際には、前任の裁判官が交替する前に自らの心証を積極的に開示するという事案は必ずしも多くありません。

 

そのため、裁判官の交替によって、こちらに有利ないし不利になるかというのは、ほとんどの事案では当事者にはわかりません。

 

この時期になると、裁判官が交替するか、また、交替する場合の後任の裁判官の様子について気になる弁護士は少なくないと思います。

 

 

交通事故の損害賠償請求の仮払仮処分

交通事故の事件を多く扱っていると、一般の弁護士が行わない手続きを扱うことがあります。

 

例えば、交通事故の損害賠償請求の仮払仮処分手続などがその代表例です。

 

仮払仮処分とは、民事保全手続の1つで、交通事故の被害者が、稼働能力を喪失して生活に困窮したり、多額の療養費を要する場合に、加害者や自賠責法3条の運行供用者に対して金員を被害者に支払うように求める処分で、裁判所に申立てをする仮処分手続きです。

 

仮払仮処分は、被害者が申し立てた事情及び加害者側の審尋を踏まえて、裁判所が命令の可否を判断します。

 

交通事故の損害賠償請求の仮払仮処分手続の特徴は、主に以下のとおりです。

 

1点目は、被害者に求められている損害賠償請求権の疎明の程度が高度であるという点です。

 

仮払仮処分は、民事保全手続で求められることが多い、いわゆる担保金の積み立てが求められないことが通例です。

 

そのため、その均衡から、被保全債権である損害賠償請求権の疎明の程度が高く要求されています。

 

2点目は、損害賠償請求権を有するのみでは足らず、仮払仮処分が行われないと生活に困窮を来すといえる状況を疎明する必要がある点です。

 

すなわち、生活の困窮の程度が著しく、自賠責保険への被害者請求(16条請求)等の保険金の受給のみでは当座の生活や療養費用がまかなえないといった事情を疎明することが求められます。

 

このいわゆる保全の必要性については、被害者の配偶者や親族の資産が十分である場合には被害者に不利な事情として斟酌されうる見解が示されているなど、厳格に判断されています。

 

以上の特徴から、交通事故の損害賠償金の仮払仮処分手続は、あまり利用されることのない手続きともいえます。

 

私自身、仮払仮処分手続が認められるケースはかなり限られたケースであるように感じており、利用した件数もわずかです。