法律や条文はわかりづらい?

法律や条例の文章や文言はわかりづらい、難しいと思われる方は少なくないのではないでしょうか。

法律や条例などの法令はわかりやすくいえばルールブックです。

ルールブックは柔軟な対応ができるように、その規定内容はわざと抽象的・包括的な文章・文言につくられています。

なぜかといえば、ルールの規定内容を一義的な文章・文言にすると、ルールの規定に完全に合致するケースについてはルール違反と認めることができるものの、一部でも当てはまらないケースについては、仮にルール違反として処理するべきケースであっても、ルール違反とはいえないことになります。これはルールの抜け穴を大きく許容するという帰結になります。

一例をあげると、窃盗罪を定める刑法235条は「他人の財物を窃取した者は窃盗の罪」とするという文言になっています。

しかし、窃取罪を規定する文言を「他人の財物を自分の所有物にした者は窃盗の罪とする」とした場合、自分の所有物にするつもりはないが所有者に無断で長期間借りるつもりで財物を奪ったという場合には窃盗罪にあたらないことになり、窃盗罪として処罰するべきケースでも窃盗罪にあたらないという抜け穴を認めてしまいます。

そのため、法律や条例などの規定内容は、柔軟な運用ができるようにわざと抽象的・包括的な文章・文言につくられているため、わかりづらいのです。

弁護士、裁判官や検察官などの法律家は、抽象的・包括的な文章・文言になっている法令をその制定趣旨に即して運用することが求められており、それが職務内容とも言えます。

代車

交通事故で車両が損傷して、その修理や買い替えのために車両を使用できなくなった場合、代車を借りることがあります。

代車代を支払ってもらえる期間は、「修理可能な場合には修理に必要な相当期間、買替が必要な場合には買替に必要な相当な期間」と考えられています。

すなわち、実際に修理や買替が終わるまでの間のレンタカー代を支払ってもらえるわけではありません。

故障した車を修理する場合、修理の箇所や方法などにもよりますが、代車代が支払われる期間は、およそ1週間から2週間程度が目安と言われています。

故障した車を買い替えることになった場合、代車代が支払われる期間は、2週間から1か月が目安と考えられています。

代車代が支払われる期間は限られており、「相当な期間」を過ぎてなお、代車を使用する場合には、自己負担になる可能性があります。

代車は、日常生活や仕事に直結する車の使用にかかわるものであり、代車費用が多額になることも少なくありません。 そのため、加害者が費用を負担する利用期間などについて、事前に加害者側と交渉をしておかないと、後から、多額の代車代を自己負担する危険性もあり、注意が必要です。

名古屋を含む愛知県在住の方で交通事故の代車にお悩みの方は弁護士法人心にご相談ください。

過去の法令の調査

事件を扱う中で、現在は廃止されている法令や改正される前の法律を調査することがあります。

現在適用されている法律を探すのは簡単ですが、過去の法律を探すのは意外に大変です。

廃止された法律については、廃止された時点の法律を調査する検索システムもありますので、比較的調査は容易です。

しかし、法律によっては繰り返し改正を重ねているため、ある時点で適用される法令を特定するのは大変です。

改正前の法律を調べる一番の方法は、調査対象時点の年代の法令全書を調査することですが、国会図書館や県立図書館で探す必要があるなど、時間と手間がかかります。

また、そもそも、法令が改正されている事実自体を発見するのが大変な場合もあります。また、改正の経緯や内容を簡単に把握するシステムがあるわけでもありません。

ビックデータが発展し、情報アクセスが容易な時代とはいっても、アナログで地道な調査が必要なこともあるのだなぁと実感しています。

改正前の法令を調査する必要があるのは、概ね、法曹三者や行政官に限られ、一般の人が調査する者ではないと思いますので、こういった情報をデータ化する業者もいないと思います。

しかし、私が弁護士を引退するまでには、こういった情報もデータ化されていてほしいと切に願います。

疑問の解決

弁護士の仕事をしていると、ある時、ふっと長年感じていた疑問が解消されることがあります。

例えば、交通事故の民事訴訟の審理を検討するなかで、ふっと学生時代に勉強した刑事訴訟法に関する判例の背景や思想理念を深い意味で理解できるようになることがあります。

もちろん、学生時代の勉強でも、判例の事案、争点、争点に関する結論やその理由など、判例を使いこなせる程度の理解は可能です。

しかし、その判例の適用範囲を深く正確に理解するためには判決文に明示されていない判例の背景や思想理念を理解する必要があり、学生時代の勉強のみでは深く理解するところまでに至らないことも少なくありません。

その判例の背景や思想理念を理解するためには、学生自体に勉強する法理論からの分析検討のみでは不十分で、現場の実務感覚も求められているためということが理由の1つだと思います。

もう1つの理由には、その判例を作った裁判官が抱いたであろう悩みや思考過程を、実務家である自分自身もその分野や別の分野を通じて経験するになるからということも大きいのではないかと思います。

刑事事件でも民事事件でもひいては行政事件でも、法律実務家として事件に取り組んでいると、必ず疑問を持つことがあります。

それは、いま扱っている事件の内容と既存の判例の事案が違うためにその判例にしたがった解決に納得ができないと感じることや、既存の判例にしたがって導き出される法的な結論それ自体には納得できるけれども、いま扱っている当事者にとっては酷な結論ではないかといった悩みです。

判例を初めとする法律実務は、学者ではなく、裁判官、検察官や弁護士といった実務家によってリードされている面は少なくありませんので、法律実務をより良いものにしていくためにも、こういった悩みは大事にしていきたいと思っています。

業界研究

法的紛争が発生する場合、紛争の原因となる法的争点のパターンは、概して2つに分類できます。

1つ目のパターンは、法律の解釈運用は明確であるものの、その前提となる事実関係に争いがあるため、法的紛争が生じているパターンです。

例えば、お金を貸すつもりで渡したところ、相手方が借りたのではなく贈与を受けたお金であると主張して、法的紛争が生じているケースを想定してみてください。

この例の場合、法律上、貸したお金を返済する義務があるという解釈運用は明確ですので、争いのポイントは事実関係(貸したのか贈与したのか)になります。

この1つ目のパターンは、事実関係を明らかにすることができれば法的紛争について結論を出すことができますので、弁護士としては、事実関係と証拠の有無を整理するというシンプルな作業をすることになります。

2つ目のパターンは、法律の規定がないあるいは法律の解釈運用があいまいなために、法的紛争が生じているパターンです。

例えば、最近その業界で生み出された業務や取引形態であるために、その業界や取引形態が生み出される前に制定された法律には明確なルールが設けられていない結果、法的紛争が生じるパターンです。

このような法的紛争に取り組む場合、その新しく生み出された業務や取引形態の内容や実態を調査することから始める必要があります。

しかし、取引形態の内容や実態といっても、業界の慣習やローカルルールなど暗黙の了解に基づいて成り立っているものも一定程度存在するため、調査が難航することも珍しくありません。

そのような場合には、関係団体や公的機関に問い合わせをしたりするなど、大変な作業が伴います。

愛知県には名古屋市を中心に専門書籍を扱う図書館や書店があるので、毎日のように足を運ぶことも珍しくありません。

法律改正や最新裁判例

弁護士業務において、裁判例の動向を把握することは欠かせません。

学生の頃は、体系的に裁判例を学ぶ機会が多く、裁判例の動向について習熟しています。

しかし、弁護士になると、事件処理に必要な範囲で裁判例を確認することが多くなります。

そのため、普段扱わない分野については、法律の改正や最新裁判例を体系的に把握する機会が少なくなってしまいます。

私と全く違う業務を扱う弁護士と話していると、私が知らない法律改正や最新裁判例の内容をはじめて知ることも少なくありません。

特に法律改正や最新裁判例の内容に直接関係する業務を扱う弁護士からの話は、実務の動向を踏まえた知見であることが多く、聞いていて大変面白いですし、勉強になります。

また、弁護士会でも法律改正や最新裁判例の研修も行っていますので、大変参考になります。

学生の頃は学者や法律実務家の書籍を読んで勉強することが多かったのですが、現在は、書籍に加えて実務家から直接話を聞くことで勉強することも多く、いいバランスだと思います。

最近全く扱っていない分野については、浦島太郎状態になっているという危機感もあるので、これからも勉強していなければと思います。

刑事事件を扱うドラマ

ドラマや映画には、いわゆる法廷ものと呼ばれる刑事事件を扱う映画があります。

テレビ以外のコンテンツも充実しているため、今では、最近の映画やドラマだけではなく、往年の作品も気軽に視ることができます。

私は学生の頃から映画が大好きでしたが、映画やドラマで扱う法廷ものは、多くがミステリーものであることが多いため、あまり興味がないジャンルでした。

しかし、このコロナ過で家族と家で映画を観ることが多くなり、法廷ものも観るようになって、法廷ものというジャンルへの印象が変わりました。

海外の映画では、いわゆる犯人の動機や真犯人を解明するミステリーを扱う作品以外にも、社会的な議論のある事項について法廷で議論を闘わせる作品もあります。

また一見犯人の動機を解明していくミステリー作品のようでいて、実は、社会的議論のある事項について問題提起をすることを主眼とすると思われる作品もあります。

色々な作品を観ていく中で、いわゆる法廷ものと呼ばれる作品の面白さに気付いていくこの頃です。

弁護士という職務に関連していえば、特に海外の作品は、刑事事件手続を正確に反映した作品になっていることが多く、また、刑事事件手続の手続違反が物語のミソになっている作品もありますので、とても興味深いです。

刑事事件に関する法律や手続は、その国の考え方などバックグラウンドによって、様々な違いが生じ、そのような背景にふと気付くことも面白さの1つです。

私が好きな作家の小説にも、愛知県を舞台としたミステリー小説がありますので、これも映画化してくれるとよいなと思っています。

証拠保全

医療事故の事案では、医療機関で保管されている資料を収集する必要が出てくるケースが珍しくありません。

資料を収集する方法としては、まずは、医療機関に対して、任意の資料の開示を求める方法があります。医療機関が開示に応じるのであれば資料の収集が可能となります。

しかし、資料が改ざんされてしまう場合、あるいは、保管期限経過により廃棄される可能性がある場合には、任意の開示請求によって資料を収集できないことがあります。

このような場合に備えて、民事訴訟法234条は、訴え提起前・訴え提起後のいずれの場合でも、裁判所への証拠保全手続を設けています。

この証拠保全手続は、医療過誤事件での医療カルテの改ざん防止のために利用されることが多いですが、その他の事件でも利用されることがあります。

この証拠保全は、裁判所に捜索・差押権限があるわけではないため、あくまで医療機関等の保全対象物の所持者管理者による任意の協力が想定されている手続きです。

そのような背景もあり、裁判所の証拠保全手続は、条文に規定されていない実務の運用・慣行に従って行われている印象を受けます。

そのため、裁判所の証拠保全手続を利用する場合には、事前に、裁判所の運用・慣行を踏まえた対応方法を検討する必要があり、場合によっては弁護士から裁判所と運用についての交渉を行う必要がある場合もあるため、注意が必要です。

法令調査

弁護士の業務において、法令調査は必要不可欠です。

法令調査は、現在の法律の規定・解釈内容に関する調査が一般的です。

しかし、時には、現在は廃止された法律、あるいは、改正前の法律の規定を調査することがあります。

廃止された法律・改正前の法律に関する文献や資料は、絶版になっていたり、廃棄されてしまっているものもあります。

そのため、廃止された法律や改正前の法律の調査には時間がかかってしまいます。

廃止された法律や改正前の法律を調査する場合、私は、弁護士会館の図書館を利用します。

弁護士会館の図書館には、絶版となった書籍も処分されずに閉架書庫においてあることが多く、必要な情報にアクセスしやすいです。

また、弁護士会館の図書館は、多くの弁護士が参照する質の高い書籍が用意されており、また論文や裁判例集なども蔵書されているため、深堀した調査や横断的な調査などが可能です。

また、専門書籍を豊富に扱う大学の図書館を利用できる場合には、大学の図書館を利用することもあります。

アマゾンなどネットで書籍を買う時代で、大型書店の数も減ってきている今日ですが、弁護士の職務においてはネットで書籍を探したりするだけでは不十分に感じています。

代車料について

交通事故で車両が損傷して、その修理や買い替えのために車両を使用できなくなった場合、代車を借りることがあります。

今回は、その代車費用を加害者に請求できる期間について、ご説明いたします。

1 加害者に費用を請求できる代車利用期間は限られている   

代車代を支払ってもらえる期間は,「修理可能な場合には修理に必要な相当期間,買替が必要な場合には買替に必要な相当な期間」と考えられています。

すなわち,実際に修理や買替が終わるまでの間のレンタカー代を支払ってもらえるわけではありません。

2 車を修理する場合の代車利用期間

故障した車を修理する場合、修理の箇所や方法などにもよりますが、代車代が支払われる期間はおよそ1週間から2週間程度が目安と言われています。

3 買い替え・全損扱いの代車利用期間

故障した車を買い替える場合、代車代が支払われる期間は2週間から1か月が目安と考えられています。

4 代車の利用には注意が必要です

代車代が支払われる期間は限られており、「相当な期間」を過ぎてなお、代車を使用する場合には、自己負担になる可能性があります。

代車は、日常生活や仕事に直結する車の使用にかかわるものであり、代車費用が多額になることも少なくありません。

そのため、加害者が費用を負担する利用期間などについて、事前に加害者側と交渉をしておかないと、後から、多額の代車代を自己負担する危険性もあり、注意が必要です。

代車については詳しくは弁護士にご相談ください。 

年末年始の過ごし方

私にとって、ここ数年の年始年始は、普段の事件から離れて、自分の課題に取り組む貴重な機会になっています。

去年の年末年始は、心と体を休めて、事件処理に対する自分の課題について俯瞰して見直すことができました。

当時、私は、依頼者の方に事件処理の方針を説明する際、事件が解決するまでの全体的な道筋を丁寧に説明する傾向がありました。

そのような説明の仕方それ自体が間違っているわけではないのですが、事件の内容や依頼者様の事情によっては、全体的な道筋を説明するのではなく、直近で問題になっている事情のみを説明するという方法がより適切なケースもあるように感じていました。

そこで、去年の年末年始は、それまでの事件処理を振り返り、依頼者の方へ事件処理の方針を説明する方法を改めて見直す時間を設けました。

普段の業務は、一つ一つの事件処理に集中するため、事件処理の傾向など事件処理に対する自分の姿勢を見直すことはあまりできませんので、とても有意義な時間になりました。

今年の年末年始は、自分の弱点になっている法律分野の知識を抑えることと、法律分野以外で興味のある本を読む時間にしたいと思っています。

普段の業務時に、法律分野のみに取り組んでいる時間が長くなると、視野が狭くなり、多角的な見方が衰えているように感じるようになっていたため、可能であれば、年末年始以降も、法律分野以外の何かしらに接する時間を設けたいです。

アナログ

デジタル化が進む昨今、電子書籍を利用する方が増えています。

私についていえば、まだ電子書籍を利用したことがないものの、気になっています。

一度、電子書籍を利用しようと思う今日この頃です。

内容証明郵便

法律相談においてしばしば質問を受けるものとして、内容証明郵便があります。


法律家以外の一般の方でも内容証明郵便を利用する例も散見されます。


しかし、なかには、内容証明郵便の機能を正確に理解していないと思われる利用方法もあります。


そこで、今回は内容証明郵便について簡単にご説明いたします。


内容証明郵便とは、1頁に「20字以内×26行以内」で書簡を3部作成し、1部を相手方に送付し、1部を郵便局に保管し、1部を差出人が保管する郵便です。


なお、現在では、電子メールによる作成・送付も可能となっています。


内容証明郵便は、郵便局において当該郵便物の内容である文書の内容を証明する(郵便法48条1項)というものであるため、この名称が付されています。


内容証明郵便を送付する場合には、郵便局において相手方に当該郵便物が配達されたことを証明する配達証明によるのが通常です。


これは、配達証明付き内容証明郵便で文書を送付しておけば、当該文書の内容とそれが相手方に配達された日時とを証明することができます。


そのため、特に、一定の内容の意思表示(相殺・契約解除等)をし、それが相手方に到達したことの証明を残しておきたい場合には、当該意思表示を文書によってし、配達証明付き内容証明郵便で送付しておけば、その証明がおおむね可能となります。


内容証明郵便については、金銭支払の催促など、「特別な郵便」というイメージを踏まえて、相手方に心理的圧迫を加えるという利用方法を用いられることもあります。


ただし、これはあくまでも事実上の効果を意図したもので、またその有効性についてはケースバイケースで、奏功しないケースもあるところです。


私が弁護士になって間もないころにおこなった業務が内容証明郵便の作成でした。


内容証明郵便を発送するため、郵便を大切に鞄にしまい、名古屋駅近くの郵便局まで恐る恐る持って行ったことを今でも思い出すことがあります。

法律の改正・運用の変更

近年、時代の変化が早くなっているように感じます。

時代の変化に対応するように、法律の改正も増えています。



例えば、民法などいわゆる基本法の改正も頻繁に行われるようになっています。

特に、民法については、明治時代に制定されて以来、大きな改正はされていませんでしたが、近年、広範囲の分野で頻繁に改正がされています。

これも、時代の変化に対応できるように改正する必要性があるためです。

また、改正前の現行法でも対応できる範囲で、法律実務も新しい試みが始まっています。

例えば、裁判についていえば、裁判所に出頭して期日を行うのが原則だったところが、現在ではオンラインによる期日が原則かのような運用をしている裁判官もいます。

裁判の審理のあり方それ自体についても、これまで以上にスピーディーな審理を実現しようとする試みが始まっています。

例えば、当事者の主張立証が争点のポイントに絞って進んでいくために、裁判所が作成した訴状や準備書面の書式を利用して審理を行うという試みが一部で開始されています。


これは、弁護士によっては饒舌なきらいのあった準備書面を制限し、裁判所が求めるコンパクトな訴状ないし準備書面の提出がされるようにする試みです。

このような審理のあり方は、争点のポイントに絞って審理をするという点で、これまで以上にスピーディーな審理が可能となります。

民事訴訟制度は、長年、裁判の審理の長期化という課題を解決するために審理の迅速化に取り組んできていますが、
今回の運用もその流れに沿ったものです。

愛知県・岐阜県・三重県内の裁判所も徐々に運用が変わりつつあるように感じています。

特に、名古屋地方裁判所本庁の運用はどんどん変わりつつあるように感じていますので、目が離せません。

裁判例の読み方

法律実務を扱う上で,過去の裁判例の理解及び検討は必要不可欠です。

 

日本法において,過去の裁判例は法源とはなりませんので,先例拘束性の原理はもちません。

 

しかしながら,民事訴訟において,最高裁判所の判例・大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例と相反する判断をした判決は,上告理由となりえます(民事訴訟法318条1項)。

 

また,法律実務において,上記裁判例に当たらなくても,参考として参照するべき価値のある裁判例であれば,法律の適用判断の重要な判断指標となります。

 

そのため,過去の裁判例の適用範囲を理解・検討することは重要です。

 

判例の適用範囲を考えるにあたり,判例分類を考える必要があります。

 

ある制定法の条件又は効果に係る規定の解釈(法的意義)に関して判断を示したもの,制定法の要件効果を前提に当該事例に対する適用について判断を示したものもあります。

 

そのため,裁判例といっても適用範囲は様々であり,一概に判断することはできません。

 

裁判例の適用範囲について検討するときには,最高裁判所民事判例集などの判例解説やコンメンタール等の条文解説書などを踏まえて,検討することになります。

 

過去の裁判例の分析検討は,学生のときに力を入れて勉強していたのですが,実務に入ってからも研鑽しなければなりません。

 

愛知県弁護士会には図書館などもありますので,期日の合間に勉強することも欠かせません。

感染防止

コロナウイルスが流行っています。

 

幸いにも,現時点までにおいて,私の周りでコロナウイルスに罹った人はいないのですが,予断はできません。

 

コロナウイルスの感染拡大防止のために,事務所内でも,裁判所内でも,弁護士会内でも,厳重な対策がとられています。

 

裁判所では,期日で使われるラウンドテーブルの椅子に座るときは,隣の人と1席以上間隔をあけて座るように指示している裁判所もあります。

 

また,噂では,マスクをつけないと裁判所に入れないという運用をしている裁判所もあるようです。

 

現時点では,コロナウイルスの影響で,予定されていた裁判期日が延期されるというケースは聞いたことがないのですが,この先はそのようなことも考えられるのでしょうか。。。

 

民事事件や刑事事件など,延期できない手続きや期日は少なくありませんので,裁判所の厳重な予防措置も必要なのかもしれません。

 

私が所属する愛知県弁護士会でも,弁護士向けに予定されていた直近の研修はほとんど中止・延期になってしまいました。

 

弁護士会の研修は,他の弁護士や裁判官からのノウハウや経験を聞けることが多く,楽しみにしていた研修もありましたので,残念ですが,やむを得ないと思います。

 

研修がない分,自分で,文献調査や判例調査をする時間に充てています。

 

時間をかけて必要な調査や情報の習得ができる点はありがたいのですが,やはり,他の弁護士の経験を聞くという点には限界があるので,文献調査・判例調査だけではなく,弁護士会の研修参加も重要だと感じます。

作業中の事故など労働災害の損害賠償請求の法的根拠

私は,愛知・岐阜・三重などの東海地方において,工事現場や工場などでの作業中にケガを負った労働者の方から,企業への損害賠償請求について,ご依頼・ご相談を受けることがあります。

 

今回は,作業中にケガを負った労働者が,加害者あるいは勤務先企業等に対する損害賠償請求をする場合の法的根拠について,ご説明いたします。

 

1 法律構成

 

① 不法行為責任・使用者責任

 

他の労働者等第三者に,被災原因について,故意過失がある場合,その第三者は,被害者に対して,不法行為責任を負います。

 

また,被災原因について故意過失のある第三者が,業務中の場合,第三者の指揮監督をする使用者(被害者の上司あるいは会社など)は使用者責任を負います。

 

② 工作物責任

 

労働者が,作業中にケガを負った場合に,ケガの発生が,施設など工作物の装備や設備が不十分であることに起因する場合,当該工作物の占有者や所有者に対して,損害賠償請求をすることができる場合があります。

 

③ 自賠責法第3条に基づく責任

 

車両にひかれたためにケガを負ったなど,車両の運行に起因して事故が発生した場合,車両の運転者に対して,損賠賠償請求をできる場合があります。

 

④ 債務不履行責任

 

当事者間での契約上の義務等や安全配慮義務等の違反がある場合に,企業や所属会社に対して,債務不履行責任として,損害賠償請求ができる可能性があります。

 

2 安全配慮義務について

 

安全配慮義務とは,ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において,当該法律関係の付随的義務として,当事者の一方又は双方が相手方に対して負担する義務をいいます。

 

安全配慮義務は,陸上自衛隊八戸車両整備工場事件判決(最判昭和50年2月25日民集29巻2号143頁)において,最高裁判所が認めた法律上の義務です。

 

現在は,労働契約法第5条により法律上の根拠として認められています。

 

作業中の事故など労災事故については,証拠資料の収集や賠償請求の組み立てなど専門的な知識と経験が問われる事件です。

 

また,労働事件に詳しい弁護士といっても,残業代請求や労務管理に詳しい弁護士であり,労災事故の経験が十分とは言えない弁護士もいるものと思われます。

 

作業中にケガを負われた被害者の方は,労災事故に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

裁判期日の雑感

どのような分野の事案でも,裁判に至るケースというのがあります。

 

このような裁判対応については,弁護士の主要業務といってよいと思います。

 

裁判対応とは,具体的にいうと,相手方と話し合いでの解決ができないときに,やむを得ず,訴訟提起をする,あるいは相手方から訴訟提起をされる場合の,裁判の対応です。

 

民事裁判の期日でどのようなことが行われるかについては,事案の内容にもよりますが,大まかにいえば,期日までに当事者から提出された主張書面や証拠書類の確認と,双方の主張内容の確認,争点の確認,今後の審理の方針のすり合わせなどが行われます。

 

とはいえ,期日においてどの程度の討議ややり取りがされるかについては,事案の内容や裁判官の個性によって,様々です。

 

私が多く扱う交通事故や労災事故についていえば,もちろん事案の内容の違いが大きいとは思いますが,少なからず裁判官の個性による違いもあるのではないかと思います。

 

例えば,裁判官が積極的に当事者双方に主張内容を確認し今後主張や立証してほしいポイントを指示していく,いわば裁判官主導型の裁判官もいます。

 

私が出会ったある裁判官は,1回の期日で,30分以上の時間をかけて,今後の審理の方針や争点の確認の打ち合わせをされた方もいらっしゃいました。

 

他方で,裁判官が積極的に介入するのではなく,主張内容や立証方法について当事者の意向を最大限尊重するという非主導型の裁判官もいらっしゃる気がします。

 

もちろんこれは,当事者双方の主張内容から,争点や今後の審理の方針が明確になっているため,あえて積極的に介入する必要がないからという理由もあります。

 

そのような場合には,淡々と,審理の方針を確認して,10分未満で期日が終わる裁判期日もあります。

 

どのような裁判であっても,私としては,裁判の期日の前日には,記録を読み直して,期日での審理に備えていくことに変わりはありませんが,たくさん裁判をしていくと,様々な裁判官に出会うことができますので,いろんな裁判官がいるなぁと思います。

 

私は名古屋や岐阜の裁判所に行くことが多いですが,地域や地方によって,違いがあるのかなぁと思うことがあります。

人身傷害保険

被害者が交通事故に遭った場合,加害者や加害者加入の保険会社への損害賠償請求をすることが可能です。

 

もっとも,被害者にも落ち度があり,過失がある場合には,加害者へ請求できるのは,損害のうち加害者の過失割合相当分のみになります。

 

そのため,被害者側の過失割合が一定程度ある場合には,加害者への賠償請求によっても十分な賠償を受けられない可能性もあります。

 

このような場合に備えて,被害者側の保険に人身傷害保険の付帯があると,便利です。

 

人身傷害保険は,契約者である被害者に過失があるときでも,その過失割合を考慮することなく,一定額の保険金を支払う保険です。

 

言い換えれば,人身傷害保険は,被害者が被る損害に対して支払われる傷害保険金として,被害者が被る実損をその過失の有無,割合にかかわらず塡補する保険金といえます。

 

 

被害者に一定の過失割合があり,かつ,人身傷害保険への加入がある場合,被害者は,加害者への賠償請求及び自身の人身傷害保険への保険金請求の両方ができることになります。

 

そのため,少なくとも,裁判をした場合には,損害のうち,加害者過失割合相当分について加害者から賠償金を支払ってもらい,加害者へ請求できない自己過失割合相当部分について,人身傷害保険より支払ってもらう可能性がでてきます。

 

これは,人身傷害保険の保険金を支払った保険会社の代位の範囲について判旨した最判平成24年2月20日民集66巻2号742頁を踏まえて,保険約款の規定がそのような規定になっている保険会社が多いためです。

 

稀に,インターネットの記事では,人身傷害保険があれば,必ず被害者の過失割合相当部分の支払いが受けられるという記事をみることもありますが,これは適切な見解ではないと考えています。

 

上記最判平成24年2月20日判決は,あくまで,保険約款に定める代位の規定に「保険金請求権者(注:被害者のこと)が他人に損害賠償の請求をすることができる場合には,訴外保険会社は,その損害に対して支払った保険金の額の限度内で,かつ,保険金請求権者の権利を害さない範囲内で,保険金請求権者がその他人に対して有する権利を取得する」という規定がある場合の,約款の解釈についての判断です。

 

そのため,加害者への賠償請求と人身傷害保険の保険金との関係については,あくまで,被害者が加入する人身傷害保険についての保険約款を確認する必要があります。

 

大きなけがを負ったにもかかわらず,被害者側の過失割合が大きいことを理由に,加害者側の任意保険会社から保険金の支払いを拒否されることがありますが,人身傷害保険がある場合には,対応方法が柔軟になります。

 

私が住む愛知県では交通事故が多いですから,人身傷害保険への加入は検討されてみても良いのではないかと思います。

基本の重要性

 

交通事故,労災事故など,依頼者の方に満足していただける解決をするためには,適切な事案対応が必要不可欠です。

 

適切な事案対応のためには,最新の知識や判例に至るまで,深く広く理解する必要があります。

 

しかし,弁護士としてそれ以上に重要な素養として,民法や民事訴訟法など基本的な法律に対する深い理解が必要であると思っています。

 

私自身の自戒にもなりますが,個々の事案の対応にあたっては,民法や民事訴訟法の基本原理に基づいて,議論を整理し,論点を分析し,事案の対応を検討する能力(もちろん経験も)が必要不可欠だからです。

 

例えば,交通事故や労災事故を扱う文献や判例雑誌は数多くありますが,それでも判例の集積や学説の議論が十分とはいえない論点も少なくありません。

 

また,複雑な事件のために,そもそもどのような問題点や論点があるのかの整理から必要となるケースもあります。

 

そのような事案にぶつかったときに,民法や民事訴訟法の基本原理に立ち返って検討することで,解決の突破口を見つけることがあります。

 

さらにいえば,一見複雑な事案でも,実は民法や民事訴訟法の基本的な理解が求められているだけであり,解決は容易であるという事案も少なくありません。

 

 

そのため,私自身の自戒を込めて,弁護士の重要な素養として,民法や民事訴訟法など基本的な法律に対する深い理解が必要不可欠であると思っています。

 

民法や民事訴訟法,刑法などの基本法は,司法試験で勉強する基本科目ですので,弁護士などの法曹人は,学生時代から勉強しています。

 

それでも,専門的な分野を扱う実務において,民法や民事訴訟法の基本原理を踏まえて対応することは,決して容易なことではありません。

 

少なくとも,私自身についていえば,特に弁護士になりたての頃には,民法や民事訴訟法の基本原理に立ち返った対応ができていなかったのではないかと思うこともあります。

 

私は,このような反省を踏まえて,弁護士として仕事をするようになって以降,学生時代以上に学ぶ機会を大事にするようになりました。

 

その結果,今では,事務所内の研修,所属する愛知県弁護士会での研修を積極的に受講し,座学だけではなく,座学では学べない実務知識を習得することを心掛けるようになり,また,休日には図書館などで調べ物や調査などの勉強をするようになりました。